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確定拠出年金制度は、本質的には、国民にとって喜ばしいものなのか。

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 国民年金基金連合会によると、iDeCo:個人型確定拠出年金制度の加入者数が2017年11月時点で、総数約71万2,000人になっていることがわかりました。

 これを見るとiDeCoはすでに、会社員も、公務員も、その奥さんも、そして自営業者も、国民の多くが加入できる、公的年金制度を補完する、国の資産形成制度といえます。

 こんなふうになってくると、今度は逆に、「確定拠出年金制度は本当に国民のためになっているの?」と考えてしまいます。

 確定拠出年金制度は、いわずもがな、公的年金制度を補完することを目的にした、老後の年金を自助努力で準備するための公の制度です。

 このため、掛金は所得控除され、運用益は非課税となり、さらに受け取る年金も所得控除されるため、税の恩恵を受けやすい仕組みになっています。

 要約すると、確定拠出年金制度は、節税が可能な老後の年金準備方法といえますが、先日、脱退したいという方からご相談がありました。

 

 確定拠出年金制度に仕様がなく加入しているという方が一定数いると感じています。

 それも無理はありません。

 自分で運用先を選ぶ必要があり、また運用商品の選択も、その判断も自分で行う必要があります。

 金融商品や資産運用、資産形成についてある程度学ぶ必要があるため、日常生活の中では、この学び自体が面倒くさいと思われている方が多いのが実情でしょう。

 そんな中、今回のご相談内容は、確定拠出年金制度から脱退したいということでした。

 

 かなりレアケースですが、事情はよくわかります。

 必要性をあまり感じないということでしたが、それ以前に、公的年金に加入しているため、それ以外のことは、もう少し自分で考えてみたいとのことでした。

 当たり前の判断だと思いましたが、やはり、自分の人生をどのように生きたいか、老後をどのように過ごしたいかという何かがあるため、節税できるからということで資金的な自由を縛りたくないというしっかりした考えを背景にお持ちでした。

 

 ポイントは、自分で進む道は自分で選ぶという点です。

 確定拠出年金制度は、本来、自らの意思でその加入の是非が決められますが、会社がこの制度を採用したからそれに従わざるを得ないとか、公的年金だけだと老後の生活費が賄いきれないかもしれないということで、半ば強制的、かつ、盲目的に加入している方が多いように思われます。

 しかし、一度加入した確定拠出年金制度は、特別な事情がない限り、容易に脱退することができません。

 なぜならば、この制度自体が、公的な社会保障制度として設計されているからです。

 つまり、みんなで掛け金を払うことで、みんなの老後を支え合うという相互扶助の考えにもとづいているためです。

 

 この点は非常に難しいですよね。

 確定拠出年金制度は、原則、加入はその人の判断で自由に決めることができます。

 しかし、公的年金制度であるため、一度加入すると、相互扶助の原則が適用されます。

 このようなことから、今度は逆に、脱退の自由が制限されるようになっています。

 裏を返せば、公的年金制度に上乗せされた、さらなる追加の公的年金制度であるため、国としては、高齢化社会における年金システムを維持するための施策となっており、このために、個人資産の選択の自由が実質的に制限されることにつながっています。

 

 お勤めの会社で企業型の確定拠出年金制度に加入していました。

 退社後、起業したことで、企業型確定拠出年金制度の加入者ではなくなります。

 確定拠出年金を続けたい場合は、会社に企業型確定拠出年金制度を導入しないなら、個人でiDeCo(個人型確定拠出年金制度)に加入する必要が出てきます。

 確定拠出年金制度のもと管理している年金資産は、他の確定拠出年金制度に移すことができます。

 これをポータディリティといいますが、これをせず、単に脱退したいという方にとっては、その門戸が、特別な条件がない限り閉ざされています。

 必ずしも脱退できないから良くないということではありませんが、仮に企業型から個人型の確定拠出年金制度に年金資産を移行した場合、一定の手数料を資産管理運用機関に支払う必要があるため、節税できるといいつつも、運用次第では年金資産がマイナスになる可能性があります。

 

 何のための公的年金制度なのか。

 相互扶助の対極にある個人の自由。

 個人的には、確定拠出年金制度は良い制度だと思いますが、国民にこの制度の趣旨と注意点をもう少しきめ細かく説明する必要があると思います。

 特に、加入前の「選択の自由」について。

 

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