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従業員を雇いたい! 労災加入アプローチ

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パート・アルバイトで従業員を雇おうと考えています。

それにともない労災に加入させる必要があると聞きましたが、どうすればいいですか。

 

 ここ数年、国の経済政策や働き方改革などもあり、起業がブームになっています。

 それまで会社員だった方が経営者になるわけですから、立場が変わります。

 従業員を雇うためにどうすればいいか非常に悩ましいところですが、経営者として最低限知っておく必要があることはしっかり押さえ、スタートアップを間違わないようにしていきましょう。

 

Ⅰ.労災とは

 今回の目標実現アプローチは「労災の加入」です。

 労災の正式名称は「労働者災害補償保険」ですが、「雇用保険」と併せ、このふたつを総称して「労働保険」と呼びます。

 労災は、労働者が業務中や通勤途中でケガをしたり、病気になったり、または亡くなった場合に、本人や遺族に必要な給付がされる公的なセーフティーネットといえます。

 また、労働者を雇う際に必ず加入しなければならないことから強制保険とも呼ばれます。

 

Ⅱ.労災加入に向けてのアプローチ

 さて、目標実現までのアプローチを見ていきましょう。

 

(1)目標の設定:労災に加入する

 

(2)現状の分析

◦事業計画は成り立っているか

◦従業員にどのような業務を担わせるか

◦従業員の労働時間や賃金のモデルはできているか。

◦従業員にかかる費用(人件費)はいくらぐらいかかるか

◦事業収支のシミュレーションは成り立っているか

 

 仮に現状分析において問題がないとした場合、次に、労災加入においての課題を見つけていきます。

 

(3)問題点と課題の抽出

①補償内容を知る

〔療養(補償)給付〕

 療養(補償)給付には「療養の給付」と「療養の費用の支給」のふたつがあり、原則として「療養の給付」によりケガや病気が治るまでの間、無料で療養が受けられます。

 給付の内容としては、治療費や入院費用、看護料、移送費等通常療養に必要なものなどが原則含まれています。

 

〔休業(補償)給付〕

 労働者が業務中や通勤途中でケガや病気のため療養し、会社を休んだ場合、賃金を受けない日の第4日目以降から、休業1日につき給付基礎日額の60%が休業(補償)給付として支給されます。

 給付基礎日額とは、原則、災害が発生した日以前3か月間に被災した労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で割った額です。

 

〔傷病(補償)年金〕

 療養してから1年6カ月間が経過しても治らず、傷病等級(第1級~第3級)に該当するとき、政府が職権で給付を決定し、日額の313日~245日分が年金として支給されます。

 

〔障害(補償)給付〕

 ケガや病気が治ったとき、身体に一定の障害が残った場合、障害(補償)年金(障害等級第1級~第7級:給付基礎日額の313日~131日分)、または、障害(補償)一時金(第8級~第14級:給付基礎日額の503日~56日分)が支給されます。

   

〔遺族(補償)給付〕

 労働者が業務中や通勤途中で死亡した場合、遺族(補償)年金、または、遺族(補償)一時金が一定の範囲の遺族に対して支給されます。

 遺族(補償)年金は、労働者の収入によって生計を維持されていた一定の範囲の遺族、遺族(補償)一時金は、年金受給権者がいない場合の一定の範囲の遺族が支給対象になっています。

    

〔葬祭料(葬祭給付)〕

 葬祭を行った者に対し、315,000円+給付基礎日額の30日分、または、60日分のいずれか高い方が支給されます。

   

〔介護(補償)給付〕

 一定の障害により、傷病(補償)年金、または、障害(補償)年金を受けており、かつ、現に介護を受けている場合、月単位で支給されます。

常時介護の場合、支給上限額は105,290円、随意介護では52,650円が上限となっています。

  

〔その他〕

 二次健康診断等給付、社会復帰促進等事業

    

②保険料を知る

 労災の保険料は事業主が全額負担する必要があります。

 計算式は以下のとおりです。

労災保険料 = 労働者に支払う賃金の総額 × 労災保険

 労働者に支払う賃金の総額は、基本給だけでなく、賞与や諸手当なども含まれます。

 また、労災保険率については、事業の種類に応じて2.5/1000~88/1000と決められています。

 たとえば、小売業を営んでいて、労働者に支払う1年間の賃金が330万円だった場合、労災保険料は次のようになります。

 労災保険料 = 3,300,000円 × 3/1000 = 9,900円

 

③手続き方法を知る

 労災の手続きには、「保険関係成立届」と「概算保険料申告書」の提出が必要です。

 前者は、保険関係が成立した日の翌日から起算して10日以内、後者は、保険関係が成立した日の翌日から起算して50日以内が、それぞれ提出期限となっています。

 提出先は、原則、所轄の労働基準監督署ですが、労働保険事務組合制度を活用し、事業所のある商工会議所や商工会などでも手続きを代行してもらえるようになっています。

 

 労災加入に向けた課題を整理した後は、実行に移ります。

 

(4)解決策の構築と実行

 中小企業の経営者にとって、自分で労働基準監督署に行き、事務手続きを行うのはいささか手間と労力がかかるかと思います。

 このため、おすすめは労働保険事務組合となっている最寄りの商工会議所や商工会を通じ、手続きをしてもらうことです。

 その際、労災保険料の算定をしてもらい、その場で「保険関係成立届」と「概算保険料申告書」の記入も済ませましょう。

 

(5)目標の実現:労災に加入した

 これで、労働者に対する労災加入の義務は果たしました。

 

Ⅲ.最後に

 今回は、起業に際し、従業員を雇う場合の「労災加入アプローチ」をテーマにしました。

 目標実現までの基本的なアプローチは、「目標の設定」⇒「現状の分析」⇒「問題点と課題の抽出」⇒「解決策の構築と実行」⇒「目標の実現」です。

 労災加入アプローチでは、通常、同時に、もうひとつの労働保険である「雇用保険」も併せ、検討していくことになります。

 この中で、最も重要なステージは「現状の分析」です。

 経営者にとって、人をひとり雇うということは、ひとりの人生を背負うことでもあり、大きな決断といえます。

 自社の経営上、人を雇うことでどのような経営効果が生まれるかを事前に予測し、利益についてしっかりとしたシミュレーションを行ったうえで雇用しなければ、せっかく雇った人材が路頭に迷うことにもつながりかねません。

 労災は、国が整備した単なる制度です。

 決まり事である以上、内容を知り、手続き方法を実行すれば、本来、事が足りますが、労災は、別の視点でいうと、従業員に対する公的な「福利厚生制度」であり、また、人材を活かすうえでの「人的投資」ともいえます。

 単純に決まりだからと捉えず、経営戦略という位置づけで総合的に考えるようにしていきましょう。

 

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