FP OFFICE 海援隊|1970年以降生まれの「ライフ&マネー塾」

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子育て世帯におけるライフプラン上の「課題」とは

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 ライフプラン上の課題は千差万別。

 そして、課題を解決するアプローチも人それぞれです。

 実務的には、人生設計を組み立てていくうえで、最終的に老後の生活に向けどのように資金的な準備をしていくかが主な課題になります。

 

〇今回の記事の目的

 課題を解決するためのアプローチを整理する。

〇関連するファイナンシャル・プラニングのジャンル

 〔ライフプラン・リタイアメントプラニング〕

〇記事の概要

Ⅰ.6つのライフステージ

Ⅱ.子育て期以降のライフステージにおける課題

Ⅲ.目標や目的を叶えるためのアプローチはひとつではない

Ⅳ.まとめ

 

Ⅰ.6つのライフステージ

 人生は十人十色ですが、現代社会において、おおよそライフステージは以下のように分類できます。

〔シングル期〕

 社会人になってから結婚するまでの期間。

〔新婚期〕

 結婚してから第一子を出産するまでの期間。

〔子育て期〕

 第一子出産後、子どもが大学を卒業するまでの期間。

〔退職準備期〕

 40歳以降、定年退職までの期間。

〔アクティブシニア期〕

 定年退職後、74歳までの期間。

〔終活期〕

 75歳から寿命を全うするまでの期間。

 弊事務所にご相談される方の約7割は子育て期と退職準備期に該当しますが、ライフプランにもとづき、キャッシュフロー表を作成し、将来のお金の流れをシミュレーションしていくと、多くのケースで「老後の資金繰り」という課題に直面します。

 ご相談者の方々にとっては、往々にして「今の家計」と「老後の暮らし」が心配だという目的意識がありますが、ご家族が今、どのライフステージにいるのか、そして、老後とはどのようなライフステージなのかという認識が曖昧なため、人生設計における「課題」を見つけ出すのが難しくなっている印象を受けます。

 簡単にいうと、

 自分が今、どこにいて、どこに向かっているのかがよくわからなくなっている。

 だから、人生における課題を見つけにくい。

ということではないでしょうか。

 

 たとえば、子育て期に該当する方の場合、その後は「退職準備期」、「アクティブシニア期」、「終活期」と3つのライフステージが待っています。

 老後の生活がどうなるか心配だという認識を持たれているなら、まず、現在地がどこにいるかを確認すべきでしょう。

現在のライフステージ:子育て期

 第一子出産後、子どもが大学を卒業するまでの期間。

 そして、老後のライフステージとは何かについて考えます。

〔老後のライフステージ〕

①アクティブシニア期

 定年退職後、74歳までの期間。

②終活期

 75歳から寿命を全うするまでの期間。

 こうすることで、子育て期から退職準備期を経て、アクティブシニア期と終活期という老後にどのように備えるかを見えやすくします。

 

 初回の面談時では、ライフステージを意識してもらうために「ライフステージの確認」を行います。

 ライフステージを意識すると、それぞれのステージにおける課題が整理しやすくなるだけでなく、自分やご家族がどこに向かっているかが見えやすくなるという効果があります。

 

Ⅱ.子育て期以降のライフステージにおける課題

 こうしたうえで、ライフプランを作成し、キャッシュフロー表によりお金の流れを見える化していきます。

 各ライフステージ上の課題はこの中から見えてきます。

子育てしながら、老後のお金が貯まるか心配です。

 FP事務所への相談の王道とも言えるお悩みですが、ライフステージをしっかり認識しておくと、ある程度、自分で工夫することができると思います。

 子育て期以降のライフステージ上の課題には、次のようなものがあります。

○家計の見直し

○教育・進学資金の準備

○住宅ローンの借入れ・借換え・繰上げ返済

○マイホームの修繕・メンテナンス

○保険の加入・見直し

○車の買換え・メンテナンス

○老後の生活資金の準備

○定年後の働き方

○退職後の住替え

○介護資金の準備

○葬儀・墓石費用の準備

○空き家対策

○相続・贈与など子どもへの財産の移転

 このように見ていくと、目標・目的が「子育てしながら、老後のお金を貯めること」なので、これらの資金的な課題について優先順位を決め、具体的に向き合っていけばよいということがわかります。

 

Ⅲ.目標や目的を叶えるためのアプローチはひとつではない

 実際のご相談では、子育て期や退職準備期において、「住宅ローンの返済」という大きな壁をどのようにクリアしていくかという課題に直面します。

 目標・目的は「子育てしながら、老後のお金を貯めること」です。

 このために、どのようにすべきかを考えるのがFP事務所の仕事です。

 一般的には、住宅ローンを借り換えましょう、繰上げ返済をしましょうという方法に終始しがちですが、目標・目的が「子育てしながら、老後のお金を貯めること」である以上、住宅ローンの返済は、目標・目的を叶えるための課題のひとつにすぎません。

 このようなことから、他にどのような家計のクセ(傾向や状況、考え方など)があるかを見出します。

○夫婦の働き方はどうですか。

○基本生活費の支出状況はどのようになっていますか。

○教育・進学についてどのように考えていますか。

○自動車関連費はどのようになっていますか。

○住宅関連費はどのようになっていますか。

○毎月、毎年の純利益はいくらぐらいですか。

○資産の状況はどのようになっていますか。

○負債の状況はどのようになっていますか。

○家計の本当の体力(純資産)はどのように推移しますか。

○いつまで働きますか。

○退職金はいくらぐらいですか。

○退職後の年金はいくらぐらいですか。

○介護はどのように考えますか。

○マイホームのメンテナンスや住替え、空き家対策についてどのように考えますか。

○葬儀や墓石についてどのように考えますか。

○子どもへの財産をどのように準備していきますか。

 これらのことはキャッシュフロー表内で盛り込まれて行きますが、家計全体を通して「子育てしながら、老後のお金を貯める」という目標・目的の実現を図ります。

 方法論としては、次の4つを軸にします。

①収入を増やす

②支出を減らす

③資産を増やす

④負債を減らす

 住宅ローンの借換えや繰上げ返済という課題は、②「支出を減らす」の中にあります。

 FP実務では、住宅ローンの返済という課題に直面したとき、あわせて「退職金」について精査します。

 自分たちの親世代では、退職金は退職一時金として受け取るのが一般的でした。

 しかし、時代が巡り、今では、一時金としての受け取り方だけでなく、年金のように分割して受け取ったり、一時金受取と分割受取を併用するというパターンもあります。

 また、退職金を退職時に支給するのではなく、お給料に上乗せしている会社もあり、退職金の額と同時に受け取り方も確認しておく必要があります。

 本当は、住宅ローンを組む前に「どのように早期に住宅ローンを返していくか」をあらかじめ決めておく方がいいですが、退職金についてある程度知っておくだけで、住宅ローンの借換えや繰上げ返済だけでなく、子育て期から退職準備期におけるお金の使い方や、アクティブシニア期・終活期に向けた生活資金の準備方法が見えやすくなります。

 「どのように、いつまで働くか」は①「収入を増やす」、「基本生活費や住宅関連費などの見直し」は②「支出を減らす」、「どのように効率的にお金を貯めるか」は③「資産を増やす」、「どのように住宅ローンの残債を減らしていくか」は④「負債を減らす」ための方策です。

 「子育てしながら、老後のお金を貯める」という目標・目的には、そこにたどり着くまでに、本来、いくつもの課題があり、またそれにともない適切な解決策があります。

現状の把握・分析課題の抽出・解決目標・目的の実現

 目標・目的の実現に向けた基本的なアプローチですが、ファイナンシャル・プラニングでは、このような流れで金銭的・経済的な解決策を施し、目標・目的の実現を図っていきます。

 

 Ⅳ.まとめ

  目標や目的を実現するためのアプローチは、人生を歩んでいく過程で誰もが身につけているスキルだと思います。

 目標・目的が大きければ、課題も大きく、解決策も膨大になっていくことでしょう。

 逆に目標・目的が小さければ、課題も小さく、解決策も少なくなります。

 お金のことだからよくわからない、国の制度や法律のことだからわかりにくいというのも真理かと思いますが、人生について考える際は、この「自分で本来身につけている基本的なアプローチ」を思い出すだけでも、頭の中が整理しやすくなるかもしれません。