平成29年度補正予算「小規模事業者持続化補助金」のポイント
毎年恒例になりつつある「小規模事業者持続化補助金」ですが、今年は3/9(金)からスタートということで、例年よりも1カ月以上時期がずれ込みました。
森友問題による国会の空転で補正予算の審議が遅れていたようです。
国民生活に深刻な影響があるとは思えない野党による追及が、小規模事業者への支援を遅らせ、わずかな期間かもしれませんがチャンスを逃す結果になっていることに多少憤りを感じています。
さて、今回は、平成29年度補正予算「小規模事業者持続化補助金」について、ざっと見ていきたいと思います。
〇今回の記事の目的
小規模事業者持続化補助金について理解する。
〇関連するファイナンシャル・プラニングのジャンル
〔相続・事業承継設計〕
◦事業承継
〇記事の概要
Ⅰ.小規模事業者持続化補助金の目的
Ⅱ.小規模事業者持続化補助金のポイント
Ⅲ.小規模事業者持続化補助金の取組事例
Ⅳ.最後に
Ⅰ.小規模事業者持続化補助金の目的
そもそも「小規模事業者持続化補助金」とは何か。
平成29年度補正予算の概要を見ると、以下のような説明がされています。
◦小規模事業者が将来の事業承継も見据え、ビジネスプランに基づい
た経営を推進していくため、商工会・商工会議所と一体となって経営
計画を作成し、販路開拓に取り組む費用を支援します。
◦賃上げ等の従業者の処遇改善を実施する事業者について補助上
限額を増額するとともに、事業承継に向けた取組、生産性向上に向け
た取組を実施する事業者を重点的に支援します。
どうやら、今回の力点は、
販路開拓に取り組むことを前提に、
①事業承継
②賃上げ
③生産性向上
に注力していこう!
ということのようです。
事業承継は、数年前から税制面でも積極的に後押しされるようになりましたが、経営者の跡継ぎ問題がかなり深刻で、今や、後継者不足を解決するための重点項目になっています。
また、賃上げについては、以前よりもかなり進んできているようですが、安倍政権では2020年までに平均時給を1,000円に引き上げることを掲げているので、今回も、前回同様継続していくということなんでしょう。
生産性向上については、業務改善による仕事の効率化を図り、GDP(国内総生産)を押し上げていこうという試みです。
この3つすべてに共通していることは「景気の押し上げ」です。
事業承継⇒廃業する企業を抑制し、経済活動を維持させること、賃上げ⇒所得を増やし、消費を活性化させること、生産性向上⇒業務の効率化を図り、企業の生産力を高めることを通じ、景気を押し上げ、デフレから脱却することを目的にしています。
地方経済を支えているのは中小企業です。
ここをしっかり支援しないことには、日本経済は内側から崩れます。
その防衛策をわずか数年で練り込み、実行しているのは評価に値します。
ただ、残念なことに、これからの超高齢化社会においては、事業承継対策を積極的に推し進めても効果はそれほど期待できないでしょう。
賃上げについては、徐々に功を奏していますが、さらに今後は、人手不足による賃金の自然増が予測されます。
しかし、消費税の増税が控えているため、予定している効果を最大限に引き出せるかは疑問です。
最悪なのは、消費が抑えられ、コスト増で事業主が疲弊することです。
そして、生産性の向上については、ITを活用して業務効率を上げることが目的ですが、例示されているのが、「POSレジソフトウェアを購入し、売上管理業務を効率化する」、「会計ソフトウェアを購入し、決算業務を効率化する」などです。
確かに効率化は図れるとは思いますが、それが抜本的な売上の向上につながるかといえばそうでもないので、効果は限定されると思います。
このように考えていくと、小規模事業者持続化補助金は「景気の押し上げを後押しするための政策」と位置付けられます。
日本経済にとっては絶対的な政策ではありませんが、デフレ脱却に向けて経済政策を総動員している安倍政権にとっては補完的な政策という意味で、それなりの効果は出ているんだろうと思います。
それ以上に、緊縮財政路線から積極財政路線に転換した方が景気浮揚効果は高いと思うんですけどね。
Ⅱ.小規模事業者持続化補助金のポイント
とりあえず、目的を知ったところで、次は具体的な政策の内容を見ていきます。
商工会や商工会議所のサイトに案内が出ているので、関心のある方はご参照ください。
〇申込期間
2018年3月9日~2018年5月18日まで
期限は大事です。
申請書類を書いて、準備するのに時間がかかるからです。
〇対象者
①卸売業・小売業
常時使用する従業員の数 5人以下
②サービス業(宿泊業・娯楽業以外)
常時使用する従業員の数 5人以下
③サービス業のうち宿泊業・娯楽業
常時使用する従業員の数 20人以下
④製造業その他
常時使用する従業員の数 20人以下
小規模事業者なので、対象者となる事業所は従業員の数が少な目です。
〇補助率・補助額
補助率)補助対象経費の2/3以内
補助上限額)50万円
補助率は原則、経費の2/3以内、補助上限額50万円というのは、75万円を経費で使ったらマックスで50万円が補助されるという意味です。
販路開拓や売上向上のために使った経費を補助してくれる政策なので、事業主にとっては、経費を抑えて売上を増やすことができるため、損益計算書(P/L)内でもレバレッジを利かせた支援策と言えます。
補助額は実をいうとこれだけではありません。
次のようなケースでは補助額が増額されています。
〇補助額が増額されるケース
◦賃上げへの取組 100万円
◦買い物弱者対策への取組 100万円
◦海外展開への取組 100万円
昨年度は、これらに加え熊本の復興関連もありましたが、今年度は削られています。
さらに、複数の小規模事業者が連携して取り組む事業については、500万円が上限ですが、1事業者当たりの補助上限額×連携小規模事業者数として支援が受けられます。
事業承継については補助金の増額は関係ないんですね。
この意味は「事業承継を見越した販路開拓」ということなので、承継に当たり新たに商売を始めるとか、業態転換を行い新たな売上につなげるといったイメージで捉えてください。
なので、小規模事業者持続化補助金はもちろん対象です。
Ⅲ.小規模事業者持続化補助金の取組事例
それでは、小規模事業者持続化補助金を利用するにあたって、どのような活用事例があるか見てみましょう。
なんとなくイメージできますか?
補助金を活用するにあたって、どのような事業のために、どのような経費が認められるかといった目線で見ていくとイメージしやすくなります。
4.最後に
申請期限は5/18です。
事業計画やらなにやらと申請に必要な書類が多いので面倒くさいと思いがちですが、商工会や商工会議所の事務局の方々が寄り添うようにサポートしてくれるので結構心強いものです。
ちなみに、補助金はいつか賞味期限が切れてしまいます。
特に、アベノミクスによる経済政策の一環として行われている景気浮揚策であるため、政権が変わると、ひょっとしたらなくなってしまうかもしれません。
別の形で生まれ変わるかもしれませんけど。
とにかく、私たち事業主にとっては非常にありがたい政策です。
販路開拓や売上向上を模索しているなら、この機会を逃さず最寄りの商工会や商工会議所に足を運んでみてくださいね。
それにしても、森友問題、国民にとっては何の益もないですが、小規模事業者持続化補助金のスタートが遅れた責任を野党はどう感じているのか・・・。
政治家には、政治が、経済、つまり、私たちの生活や会社の経営に間接的に影響を与えることをもう少し意識してもらいたいものです。