そろそろ「ドルコスト平均法で長期投資」信仰は終わりにしませんか。
森友学園をめぐる公文書改竄事件で安倍内閣の支持率が急落したことも重なり、昨日の日経平均株価指数は値を下げました。
前日比▲195.61円だったのでそれほど大きな下げではありませんが、どちらかというと円高に引っ張られての下落といったところでしょうか。
本質的には、今年の2月以来、日経平均株価指数はすでに調整局面に入っていると考えていますが、最近の動きは、この中で「一定の水準まで値を上げると売られやすい」の繰り返しです。
〇今回の記事の目的
運用期間と投資スタンスの関係を理解する。
〇関連するファイナンシャル・プラニングのジャンル
〔貯蓄・資産運用〕
◦NISA・つみたてNISA・ジュニアNISA
◦株式
◦投資信託 など
〇記事の概要
Ⅰ.投資初心者にありがちな傾向
Ⅱ.ドルコスト平均法の誤解
Ⅲ.運用期間と投資スタンスの関係
Ⅳ.最後に
さて、今回は、運用期間と投資スタンスの関係について見ていきたいと思います。
Ⅰ.投資初心者にありがちな傾向
①アベノミクスによる株式や投資信託の値上がりで思わぬ利益が出た。
②ややこしいことを考えるのが面倒なため、長期で株式や投資信託を持つことが良いと思っている。
③株式投資は企業業績を中心に考えるのが良いと信じてやまない。
これらは投資初心者に見受けられる傾向です。
このように思うのも無理はないんですが、投資中級・上級者になるにつれ、これらの固定観念は薄れていきます。
①については「良い経験」ですよね。
お金にまつわる成功体験なので、これが正しいと思ってしまいます。
でも、相場は生き物です。
過去の経験則はそんなにあてになるわけではありません。
②については「面倒くさい」という心理です。
そもそも資産運用は複雑なことなので、ここに目をつぶってしまうとリスクコントロールが難しくなり、損失も出やすくなります。
③については、「株式投資の原理原則」なんですが、実体経済と資産市場が極めて乖離しているIT革命後の経済情勢では、業界を選ばないとこの原則はあまり通用しません。
Ⅱ.ドルコスト平均法の誤解
なぜだかわかりませんが、日本の場合、長期投資をする際はドルコスト平均法でと喧伝されています。
高値圏でドルコスト平均法を使って長期投資をするとどうなるのか。
ドルコスト平均法は、株式や投資信託などを定期的(毎月など)に一定の「金額」分購入することで、定期的に一定の「数量」を購入するよりも、平均購入単価を抑えることができます。
考え方としては、こんな感じです。
①平均購入コストが下がるため、価格が下がったときに安く買えたと思える。
②逆に、一定額の買い付けのため、価格が上がっているときは少ししか買えないので、高値づかみは避けられたと思える。
ポイントは「思える」ですが、ドルコスト平均法は、相場が上昇しているときに有効に働くため、平均購入単価を下げながら買い付けることができ、「なんか得した」という気分になります。
でも、相場が下落しているときにドルコスト平均法でひたすら買い続けてしまうと、「買っては下がり、買っては下がり」を繰り返すだけの下落ゲームになるため、最終的に何のために投資をしているかわからなくなるでしょう。
特に、投資を始めて間もないという方は気を付けてくださいね。
Ⅲ.運用期間と投資スタンスの関係
原理原則をもとに投資スタンスを考えると、このようになります。
基本的には「安値圏で買い」、「高値圏で売る」のが一番いいですよね。
安く買って、高く売るということですが、いつが安くて、いつが高いかを判断するのは至難の業なので、「安値圏」・「高値圏」の幅をなんとなく想定しておきます。
上のチャートは日経平均株価指数ですが、安値圏はおおよそ12,000円より下、高値圏は18,000円より上とイメージします。
このイメージをしたら、今の価格水準を確認します。
仮にこの値が高値圏にあると考えた場合、ドルコスト平均法を用いた長期買付はなかなか勇気がいるように思います。
今のような水準は、相場用語で「調整局面」といいますが、それまでの上昇が一段落し、下落をともないながら値を戻す場面です。
ここでは「揉み合い」と呼ばれる、一定の範囲内で上がったり、下がったりを何度も繰り返す動きが目立つようになります。
このような局面では、相場の方向感が定まりにくいため、どちらかというと運用期間を「短期」、もしくは「中期」とし、いつ相場が急落してもすぐに逃げられるようにします。
逆に、「長期」的に、毎月一定額を買い増すようなドルコスト平均法で投資スタンスを縛ってしまうと身動きが取れなくなり、損切りしたくてもできない状況に陥りやすくなります。
ここにドルコスト平均法の罠があります。
Ⅳ.最後に
確定拠出年金制度は、投資信託を選んだ場合、毎月、一定の拠出額をもとに買い付けていきます。
つみたてNISAも同じです。
一方、一般NISAやジュニアNISAは、定額買付を行わなくても利用することができます。
つまり、前者は、老後の生活資金を準備するための補完制度であるため、「長期」投資を前提とした資産形成制度といえます。
しかし、後者は、非課税期間が5年間で、5年を過ぎてもロールオーバーできるため、どちらかというと「短期」・「中期」的な投資を促すための制度と理解できます。
なんでもかんでもドルコスト平均法で長期投資と思わずに、制度の目的を理解したうえで、それに適した運用スタンスを選びながら投資をするよう心がけましょう。