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ドル・円相場。円高リスクにどう対応すべきか。

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 為替がいよいよ動き出しました。

 株価の急落から約1週間、時間がずれましたが、予想通り変化の兆しが現れています。

〇今回の記事の目的

 現在のドル・円相場の状況を確認し、資産運用や資産形成の理解を深める。

〇関連するファイナンシャル・プラニングのジャンル

〔老後の貯蓄・資産運用〕

 ・確定拠出年金

 ・NISA

 ・外貨預金

 ・外貨建て保険 など

〇記事の概要

 (1)なぜ円高になっているのか

 (2)ドル・円相場のチャート分析

 (3)円高リスクに対する防衛策

 

なぜ、円高になっているのか

 ドル・円相場が円高になっているのは、本質的には「リスク回避」がその理由です。

 ここ数日の経緯を少し整理してみます。

アメリカ)

①金融引締め政策による利上げ圧力の高まり

②トランプの行う法人税減税

③国防費などの歳出増加にともなう国債増発懸念

 

日本)

①日銀の黒田総裁の続投

②金融緩和政策の継続による低金利状態の維持

 日本は基本的には変わっていません。

 ポイントはアメリカが変わっていることです。

 ①では、すでにアメリカは金融緩和から金融引締めに政策転換を図っています。

 この結果、アメリカの金利が少しずつ引き上げられるようになりました。

 マーケットは始め、この動きを「景気がさらに良くなる」と好感していました。

 株価が急激に上がっていったのはこのような理由からですが、2月に入り見方が一変しました。

 「金利が上がると企業業績が悪くなる」

 このようなことで株式が売り込まれているのが現状です。

ポイント①

金利の引き上げ⇒企業業績の悪化⇒株価の下落

 ②は、トランプ大統領が掲げていた法人税を始めとする大型減税策が議会を通過したという材料です。

 当初は、減税策により「企業業績が向上する」、「家計消費が増える」といったプラスの受け止め方がされていましたが、2月になってマイナスに受け止められるようになりました。

 「企業業績が向上すると、賃金が上がっていく。ということは、景気がさらに拡大していくため、金利が今まで以上に上がりやすくなる。」という受け止めです。

 この結果、企業業績の悪化が懸念され、株式の売却に拍車がかかりました。

ポイント②

減税策⇒景気のさらなる拡大⇒金利の引き上げ⇒企業業績の悪化⇒株価の下落

 そして、③の「国防費などの歳出増加にともなう国債増発懸念」ですが、これは、国の予算規模が大きくなると、足りない部分を国債(よそからの借金)で賄う必要が出てくるため、国債への信認が落ちることで国債が売られ、金利がより上がりやすくなることを意味しています。

 これを理解するには、国債金利の関係を知っておく必要があります。

国債価格の上昇⇒金利の下落

国債価格の下落⇒金利の上昇

 国債を発行すると国債の数が増えるので価格が下落します。

 国債価格と金利は表裏一体の関係にあるため、国債価格が下落すると金利は上昇します。

ポイント③

歳出の増加⇒国債の増発⇒国債価格の下落⇒金利の引き上げ⇒企業業績の悪化⇒株価の下落

 

 このように見ていくと、①・②・③はすべて、金利の上昇」が「企業業績を悪化」させ、「株価の下落」につながっているとまとめられます。

 そして、株価が下落すると、マーケットのプレイヤーたちは、運用リスクを避けるために安全資産である「日本国債」や「金」などに資金をいったん退避させます

 この過程で日本円が買い戻され、円高につながりやすくなっています。

 ということで、今の円高・ドル安は「リスク回避」が目的となっています。

 

ドル・円相場 チャート分析

 それではドル・円相場のチャートを見てみましょう。

◎ドル・円相場 チャート分析

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 このチャートは、アメリカ・ドルのグラフとして見てください。

 上にいくと「ドル高(円安)」、下にいくと「ドル安(円高)」です。

 2月14日(水)午後2時、ドル・円相場は1ドル=106円台に突入しました。

 これで昨年から続いていた「1ドル110円を挟んだ攻防」に終止符が打たれる可能性が高まりました

 ポイントは青色の太いラインです。

 前日にこのラインをすでに割り込んでいたんですが、本日、その割込みがより深くなりました。

 これを受け、テクニカル的には、今後、もう一段のドル下落(円上昇)が予想されています

 次の攻防ラインは、おおよそ1ドル=100円の水準です。

 より具体的にいうと、チャート上の黄緑色の点線(おおよそ1ドル=102円~101円)が注目されるようになるでしょう。

 目先の時間帯としては、「年内」をドル安(円高)トレンドの期間と見ています。

ドル・円相場のポイント)

①次の攻防ラインは1ドル=100円水準

②年内は円高・ドル安基調

 

 このような予測が成り立っていますが、注意すべきポイントは以下の点です。

日米金利の関係)

アメリカ:金利上昇圧力

日本:金利変わらず

アメリカの金利>日本の金利

よって、ドル・円相場は、マーケットのプレーヤーたちが冷静さを取り戻すと、再び円安・ドル高基調に戻る可能性が高い

ただし、1ドル=100円の水準を下回る場合は、この限りではありません

 このようなことから、ドル・円相場は、短期的には「円高・ドル安」中期的には「円安・ドル高」になるだろうと考えています。

 

円高リスクに対する防衛策は?

 仮に円高になる場合、どのように家計を防衛していけばいいでしょうか。

 円高のメリットとデメリットのうち、顕著な例を挙げてみます。

メリット)

・物価が安くなる。

・低金利が続くため、住宅ローンなどは借りやすい。

デメリット)

・企業業績が下振れる。

・低金利が続くため、預貯金や保険などの安全資産での貯蓄が今後も難しくなる。

 ただし、次の点は日本にとってプラスに働くでしょう。

人手不足による賃金の自然増

 これがあるため、物価の大幅な下落はないと思います。

 むしろ、賃金が上がることで収入が増え、国内の景気を下支えする可能性が高いと見ています。

 それでもマイナス金利政策はまだまだ続くため、お金を貯めづらい状況が続くと考えておく方がいいかもしれません。

 支出面では、物価が安くなる可能性が高くなることから、今まで通り、必要なものとそうでないものを見極めながらも、少し贅沢な買い物ができる余地が広がるでしょう。

 資産面では、預貯金や保険などの安全資産を選択する場合、金利が低いためお金が貯まりにくく、逆に株式や投資信託などのリスク資産を選択する場合も、株価の下落トレンドが描かれているため、積極的に資産運用を行うのが難しくなっていきます

 お金の使い道としては、以下のようにすると良いでしょう。

①必要なものとそうでないものを見極め、堅実な買い物を心がける。

②住宅ローンを借りている場合は、この期間でなるべく多く繰上げ返済をする。

③資産運用をしている場合は、なるべく早めに利益を確定する。

④預貯金については、金利の高い定期預金に預け替える。

 今回の円高は、今のところ、極端な円高になる可能性は薄いため、悲観的になる必要はないと考えています。

 むしろ、円安・ドル高トレンドに移るまでの準備期間として、次の波に上手く乗れる仕度を整えておきましょう

 

 

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