2018年。今年の資産運用は、アメリカとロシア、中東がカギになる!?
2018年のマーケット、今年はどうなるんでしょうかね。
個人的には中東情勢の行方を中心に見ていこうかなと思っています。
ざっくりいうと、
①2018年は中東情勢がポイント。
②中東の後ろにはロシアが隠れている。
③アメリカ第一主義の本質は原油価格を操作しドル基軸を強化することにある。
④原油価格と株価が上がっている。
⑤原油価格と金価格が上がっている。
⑥行き場を失うマネーの行き着く先は?
中東情勢のポイント整理
中東情勢を見る場合、サウジアラビアVSイランという構図がありますが、イスラム教スンニ派とシーア派の対立としても描くことができます。
サウジアラビアの後ろにいるのはアメリカ、イランの後ろにいるのはロシアです。
VS
イラン≒ロシア
本来ならば中東情勢をこのような単純な図式で表現することはできませんが、基本的な構図という意味で捉えてください。
資産運用上、中東情勢について私たちが知っておきたいことは次の点です。
2016年1月
サウジアラビアとイランが断交。
2017年1月
OPECとロシアなどの非加盟国が石油の減産を協調して行うと発表。
2017年6月
2017年11月
減産の継続期間を2018年末まで延長することで合意。
2017年12月
イラクのアバディ首相がISを掃討したと宣言。
2017年12月
中東を望んでいるロシア
ここにロシアの動きを重ね合わせてみます。
ロシアは自国の国際的な影響力を強化しようとしている
政治面や軍事面、経済面で国際的なプレゼンスの強化を図っているのがロシアです。
①中東における影響力の強化
⇒原油価格をコントロールし、資源から得られる国家の歳入を増やしたい。
⇒ISを掃討し、アメリカとも緊密な関係を築くことで中東における影響力を堅持しようとしている。
②ヨーロッパにおける政治的な対立の緩和
⇒フランスのマクロン大統領とドイツのメルケル大統領が反トランプに回ったことで、ロシアとの関係性が良くなっている。
③北朝鮮を巡る東アジア情勢では傍観
⇒表向きは北朝鮮の核開発については批判してはいるものの、日米との良好な関係を築き東アジアを安定させる方が自国の利益につながると判断している。
ロシアは歴史的にユーラシア大陸を西・中央・東と3つに分け国際戦略を構築しています。
ここ数年の動きでは、西であるヨーロッパに対し譲歩を重ね、東である極東アジアにおいては変化を望まず、中央である黒海周辺から中東地域に対して政治・外交・軍事・経済の4戦術を駆使して展開しているように思われます。
アメリカは何をやってるんだ?
これらを眺めつつ、アメリカのトランプ大統領は何を考えているのか、かなり気になるところです。
保護主義とも言われていますが、やっていることは結構めちゃくちゃで、本当にアメリカが一番になるのか疑わしい側面がたくさんあります。
イギリスがEUから離脱し、ヨーロッパ諸国の反感を買いました。
また、地球温暖化対策の国際的な枠組みであるパリ協定からも脱退し、世界的な反発を喰らっています。
これに加え、カタールと国交断絶をしてしまったサウジアラビアなどのイスラム教スンニ派諸国同士の不仲を引き起こし、さらにエルサレムをイスラエルの首都と認めたことで、中東地域の秩序の安定を揺るがし、EU諸国や日本もこの行為について批判しています。
にもかかわらず、ロシアや中国とは仲良くしたいという思惑が垣間見え、結局、トランプ大統領がやろうとしていることは、世界をアメリカとロシアと中国の3つで支配分けする三国鼎立のような気がします。
現状ではアメリカの思惑をこう見ています。
①ロシアの動きをある程度容認しながらイランの力を抑え込む。
②アラブの盟主であるサウジアラビアの重要度を下げる。
③イスラエルによる中東のプレゼンスを高める。
⑤アメリカのシェールガスの供給量を増やすことで資源価格をコントロールしやすくする。
⑥基軸通貨であるドルの国際的影響力を強化する。
つまり、アメリカ第一主義とは、資源を活用したドルの世界的な支配力を強化することにあるように思われます。
これに今後、中国がどのような反応を示すのか。
2018年のマーケットは、ドルを中心に米露中の3国がどのように絡み合っていくのか、中東情勢を中心に見ていこうと考えています。
原油価格と株価の関係
さて、恒例のチャート分析ですが、まずは原油価格から。
2015年の原油価格の急落は、アメリカでシェールガスが大量に産出され、アメリカ国内の石油余剰が増え、これが世界に波及した結果です。
それでも2016には底値をつけ、それ以降上昇し続けています。
ここで重要なのが、なぜ上昇するようになったかです。
答えは、サウジアラビアとイランが国交を断絶したから。
中東情勢の不安定化なんですね。
この年も、イスラム国への攻撃を含め、中東地域は地政学的リスクが高まっていました。
それでも2017年は原油価格は途中まで下落していました。
IS掃討作戦が結果を出してきたからですが、その後、この年はOPECが石油の減産を決め、またサウジアラビアとカタールが国交を途絶えたことから、再び原油が上昇しています。
2017年12月ぐらいからの上昇は減産期間の延長が直接的な要因ですが、背景にはロシア経済の回復をアメリカが容認していることが挙げられます。
アメリカとロシアの親密な関係。
トランプ・プーチン両大統領が中東を中心に描いた絵図が原油価格に現れているような気がします。
国際情勢で原油マーケットを見ていくとこの辺で終わりますが、原油の需給面から見ると少し見方が違ってきます。
原油は現状においてもそうですが、依然として供給過剰の状態が続いています。
だからOPECは減産の延長を決定したわけですが、原油価格が上昇すると、今度はアメリカ国内においてシェールガスが増産されます。
これはシェールガスの産出コストの方が原油に比べ安いからですが、こうなると、今度は原油価格の上昇が落ち着いてきます。
そしてある一定の水準に近づくと反転下落する可能性が出てきます。
つまり、すでに原油市場は、シェールガスの採掘により低位にコントロールされやすい体制が整っていて、これによりアメリカは世界における資源のパワーバランスをコントロールしやすくなっていると判断できます。
だから、サウジアラビア重視の中東戦略を改め、ロシアの様子を見ながら自国の利益を確保する戦術に切り替えたんだと思います。
こうなると、資源力が基軸通貨であるドルの力を決定づけることになるため、モノの値段と貨幣価値のバランスが今後どうなるかを観察することが求められます。
チャートを見ると、2016年が原油市場と株式市場(NYダウ)のターニングポイントだったことがわかります。
通常、原油価格が上昇すると株価は上がります。
これは景気が良くなると、経済が活性化するため、原油需要が増えるからです。
ただし、原油価格が上がり過ぎると、今度は逆の相関になります。
つまり、原油価格の過剰な上昇⇒企業のコスト増⇒株価下落です。
上のチャートではリーマンショック前がこれに当たります。
さぁ、原油価格が上昇してきました。
これには表面的にアメリカの景気拡大という背景があります。
しかし、2016年からのNYダウの上昇は、本質的には、世界的にダブついているマネーが株式市場と原油市場に及んでいるという単純な図式です。
これにアメリカの景気拡大が重なっただけという話なのかもしれません。
2016年以降、マネーの流れは明らかに変わりました。
原油高・株高の流れです。
〇NYダウチャート分析(超長期波動)
〇NYダウチャート分析(長期波動)
この流れが日本の株式市場にも波及し、日経平均株価指数は2018年になっても高値を更新し続けています。
〇日経平均株価指数チャート分析(長期波動)
〇TOPIXチャート分析(長期波動)
以上、NYダウ、日経平均株価指数、TOPIXのチャートを挙げましたが、テクニカル面でのポイントは以下の通りです。
①上昇相場はまだ続く可能性が高い。
②ただし、株式市場は高値圏に位置しているため、反転下落への警戒が必要。
2017年の株式相場と比べると、2018年は大分煮詰まってくるイメージです。
原油価格と金価格の関係
少し話を戻します。
先ほど、原油価格は上昇する可能性が高いという話をしました。
OPECとロシアなどの非加盟国による減産体制と中東の不安定化が原因です。
しかし、原油価格が上昇してくると、アメリカでシェールガスが増産されやすくなるため、石油の供給過剰が常態化している今のような状況では、今度は原油価格が下落しやすくなります。
原油価格が下落するタイミングが株式市場の転換ポイント?
この答えはまだ出ていません。
少し視点を変えます。
このチャートは、WTI原油にロンドン金を重ね合わせたものです。
ともに2016年からマネーの流入が認められます。
原油価格が上昇するのと同じくして、金価格も上昇しています。
この要因は中東などの地政学的リスクが挙げられますが、金は安全資産であるため、地政学的リスクに対しては原油よりも早く反応しています。
ただ、傾向としては両者とも上昇波動を描いています。
原油価格が上がっている。
金価格が上がっている。
金にまでマネーの流入が起こってきてるんですね。
原油という実物市場だけでなく、価値の貯蔵手段である金にまでマネーが向かっています。
この点も警戒ポイントです。
マネーはどこに向かっていくのか。
原油価格が上がる。
株式市場が上がる。
金価格が上がる。
その先、マネーはどこに向かっていくのでしょうか。
最後にこの記事を紹介しておきます。
2018年は、2017年同様、やはりアメリカの利上げは注目されますが、中間選挙に至るまでのトランプ政権の行方もフォーカスされやすくなるでしょう。
日本国内に目を向ければ、原油価格の上昇だけでなく、失業率の低下による賃金の自然増で物価が上昇する年になると思います。
これが日銀の金融緩和政策の変更を後押しする可能性はありますが、日銀の基本スタンスは依然として金融緩和の維持にあるため、日本はこれからといったところでしょうか。
ただし、2019年10月は、予定として消費増税が控えています。
また2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控えているため、国内の実体経済としては、消費税率を引き上げることとオリンピック需要の終息に対する予算の手当てをどうするかが注目されるでしょう。
2018年。
アメリカとロシア、そして中東情勢から目が離せません。