どのようにお金を貯めるか。その本質は「物価」にある!
2017年9月19日の記事では、「いつまでに、いくら、お金を貯めるか」ということで、老後のお金を題材に考え方を紐解きました。
今回は、お金を貯める工夫、つまり、どのようにお金を貯めるのかについてお話していきたいと思います。
お金を貯める方法を考える前に、大前提となる「物価」についてお話します。
世界経済のネタ帳という便利なサイトがありますが、このグラフはIMF「World Economic Outlook Databases」をもとに作成された「日本の消費者物価指数の推移」です。
日本の場合、1998年辺りをピークに消費者物価指数の上昇が頭打ちとなっています。
その後は、物価の変動がほぼ横ばいで推移し、いわゆるデフレ経済が固定化しています。
アベノミクスが始まってからは物価を上昇させる政策がとられているため、幾分物価は上昇に転じていますが、昔と比べるとその勢いは緩やかなものとなっています。
〇物価:上昇⇒貨幣価値:下落
〇物価:下落⇒貨幣価値:上昇
物価とお金(貨幣価値)はこのような関係になっています。
上記グラフでは、消費者物価指数のピーク時までは物価が上昇していた反面、貨幣価値は下落していました。
その後のいわゆるデフレ経済では物価が下落し、その代わりお金の価値は上昇しました。
これが貯蓄の本質ですが、お金を貯める工夫を何もしなければ(たとえばタンス預金)、物価上昇時はお金の実質的な価値が目減りします。
このようなことから、お金を貯める際は物価を考慮し、その動きに適した貯蓄方法を選んでいきます。
よく「インフレのときは資産運用をしましょう」と言われます。
これは、インフレ(物価が上昇すること)になるとお金の価値が目減りするので、インフレ率を超える利回りが期待できる金融商品を選びましょうという意味です。
たとえば、物価の上昇率が年率1.0%、普通預金の金利が年0.01%で銀行に100万円を預け入れたとしましょう。
物価を考慮しなければ、1年後の100万円とその利息の合計は100万100円になります。
しかし、物価を考慮した場合、お金の価値(貨幣価値)が1.0%下落するので、1年後の100万円とその利息の合計は99万99円となってしまいます。
前者の元利合計額を「名目値」、後者を「実質値」と言いますが、お金を貯める際は、原則、物価を考慮した「実質値」で計測し、貯蓄や運用を心がけていきます。
このようなことから、お金を貯めるには、金融機関から提示される金利や戻り率、利回りを基準に考えるのではなく、物価の上昇率との相対的な関係で考えていく必要があります。
結論を言ってしまうと、これを考慮しないからお金が貯まらないんです。
といっても、金融機関はここまでの話はしてくれません。
なぜならば、私たちの生きている世界は目に見えるもので判断されるからです。
現実的には、お金の価値はモノの値段(物価)との相対的な関係にもとづき決まっているにもかかわらず、この関係は日常生活では目に見えないので、つい名目値だけを見てしまいます。
ここが、お金が貯まらない本当の理由なんですね。
さて、ここまでの話を前提に、お金を貯める方法を紹介していきます。
ちなみに、お金を貯める目的や期間、金額については、「何のためにお金を貯めるのか。お金の性質を見極める!」と「いつまでに、いくら、お金を貯めるのか。人生100年時代、どんぶり勘定で老後のお金なんて貯まらない!」をご参考ください。
〇金融商品の種類
〔安全な金融商品〕
①預貯金
②貯蓄性の保険(日本円建て)
〔比較的安全性の高い金融商品〕
①国債(日本)
③社債(日本)
〔中リスクの金融商品〕
①外貨預金
②貯蓄性の保険(外貨建て)
③投資信託
④株式
⑥国債(海外)
⑦社債(海外)
⑧不動産投資
⑨金の現物取引
〔高リスクの金融商品〕
①FX(外国為替証拠金取引)
②株式の信用取引
③株式の先物取引
④ブル・ベアファンド
数えたらかなり多くの金融商品があるのがわかります。
現在、アベノミクスでは物価の目標を年率2.0%としています。
つまり、物価は毎年2.0%ずつ上がっていきますよ~と言っているわけです。
このグラフはインフレ率の推移を表したものです。
前掲したグラフは消費者物価指数そのものでしたが、このグラフは「消費者物価指数の変動率」です。
つまり、前年に比べ、消費者物価指数がどれぐらい変化したかを表しているのがこのグラフです。
バブルが崩壊する前からインフレ率は0.0%をうろちょろしてたんですね。
その後、デフレになり、リーマンショックを経て、アベノミクスの初期段階まではマイナスのインフレ率となる時期もありましたが、今のところ、かろうじてプラスを維持しているといったところでしょうか。
これを見ていると、2.0%の物価目標を達成するのは難しいように思われますが、人手不足にともなう賃金上昇がこれから本格的に始まっていくことを考えると、消費税率の引き上げも含め、今後、インフレ率は上がっていくと考えるのが妥当かもしれません。
そこで、前述した「物価と貨幣価値の関係」です。
傾向として、インフレ率がプラスを維持すると考えた場合、たとえば2017年のインフレ率が対前年比+0.1%、2018年は+0.5%、2019年は+1.0%などとなると、3年間の消費者物価指数の上昇累計値は1.6%になります。
つまり、今と比べると、3年後の物価は1.6%上がっていることになりますが、これは同時にお金の価値が1.6%下がっていることも意味します。
このように考えると、貯蓄や運用をする際は、1.6%を超える金利や戻り率、利回りを得られる金融商品を選ぶ必要が出てきますが、先ほどの金融商品の中でどれがふさわしいと言えるでしょうか。
答えは、「中リスク以上の金融商品」です。
当たり前ですが、預貯金でお金を貯めようとしても、ネット銀行ですら5年物の定期預金の金利が年0.3%(現在の最高金利)という時代では、仮に3年後、物価の上昇率が今と比べ1.6%上がっている場合、貨幣価値が1.6%目減りするため、実質的な資産効果は0.7%のマイナスとなります。
つまり、銀行にお金を預けておくと、3年後、今と比べお金の価値が目減りしているため、銀行に預けたお金は実質的に減っていることになります。
逆に、毎年、年0.6%の利回りで運用できる金融商品を選んだ場合、3年間の総利回りが1.8%となるため、たとえ物価が現在と比べ1.6%上昇し、貨幣価値が1.6%下落したとしても、実質的な資産効果が+0.2%になることから、お金は増えたと言えます。
参考までに、物価が下落していくと予測する場合は、逆にお金の価値が上がっていくので、預貯金や貯蓄性の保険など安全な金融商品を選ぶのが正解です。
ただ、物価が下落しているからデフレと思われる傾向がありますが、どの金融商品でお金を貯めるかを判断する場合は、消費者物価指数は「変動率の累計値」を用いることから、経済成長がともなっている限り、必然的に物価はプラス傾向になります。
このため、長期的には、いずれにせよ、安全な金融商品にお金を偏らせすぎてしまうと、お金が増えない可能性が高まるため注意するようにしましょう。
今後、先進国では経済成長率が低く推移すると予想されています。
先進各国で固有の要因はありますが、傾向としては、世界的に広がっているグローバル経済で、マネーの流れが先進国から新興国・後進国に向かいやすくなっているため、これからも地球規模での経済成長率の平準化が起こっていくと考えられます。
先進国の場合、消費者物価指数の伸びは新興国や後進国の経済成長に影響を受けますが、経済成長率の平準化が起こっていくため、物価の伸びも必然的に緩やかなものにならざるを得ません。
このように考えると、リスクの高い金融商品を選ぶのはいかがなものかと思いますが、おおよそ中リスクの金融商品を混ぜてポートフォリオを組み、お金を貯めていくのが最善と思われます。
お金を貯める工夫。
そのポイントは、「物価と貨幣価値の関係を考慮し、物価の変動率を軸に、それを上回る金融商品を選ぶこと」でした。
ちょっと難しいかもしれません。
でも、これが本質なので、金融機関のセールスの言われるがままにお金を貯めたくなければ、この機会に自分でちょっと考える工夫をしてみましょう。
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