FP OFFICE 海援隊|1970年以降生まれの「ライフ&マネー塾」

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いつまでに、いくら、お金を貯めるのか。人生100年時代、どんぶり勘定で老後のお金なんか貯まらない!

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 前回は、「何のためにお金を貯めるのか。お金の性質を見極める!」ということで、“お金は、目的に合わせ、3つに分けて貯めていきましょう”というお話をしました。

 今回は「お金を貯める4つの原則」のうち、“いつまでに”、“いくら”お金を貯めるのかについてお伝えしていきたいと思います。

 その前に、老後の暮らしってイメージしたことありますか?

 1970年以降生まれの私たちは、当たり前のことですが、自分たちの親が歩んできた時代と異なる価値観や制度のもと「老後」を考えていくことになります。

 たとえば、何歳からが老後なのか。

 国の方向性としては、人生100年時代の老後は75歳からであるという方針のもと、社会保障や雇用などの制度設計が行われていくと考えられています。

 いつまでに、いくらお金を貯めるのかという問いを投げかける前に、お金を貯める目的を「老後の生活資金の準備」とした場合、まず、自分にとっていつからが老後なのかをはっきりとさせておく必要があります。

 つまり、65歳からを老後にした場合、65歳までにお金をいくら貯めるのか、75歳からとした場合、同様に75歳までにお金をいくら貯めるのかを考えればいいということです。

 

 日本人の場合、多くの方が具体的なライフプラン(人生設計)を立てずに老後について考えようとします。

 現在、70歳前後ぐらいまでの人たちならそれでも良かったと思います。

 しかし、これからの健康長寿社会の到来を受け、国の政策がさまざまな面で書き換えられていくため、これまで既定とされていた私たちのライフプランには、「長生き」をキーワードに見直しの必要が出ています。

 このようなことから、老後をいつからにするかを考える際は、ライフプランを作成し、長生きのリスクを見える化したうえで検討していく必要があります。

 

 いつまでに、いくら、お金を貯めるのか。

 老後のお金を貯めることを目的とした場合、“いつまでに”は「老後の生活をいつからスタートさせるのか」ということになります。

 つまり、老後の生活に入る「目標期限」をいつに設定するかということですが、この期限によって、これからお話しする「お金をいくら貯めるのか」についての考え方が違ってきます。

 よく、保険会社などではこんなデータが利用されます。

生命保険文化センター

平成28年「生活保障に関する調査」

〇老後に必要な生活費:平均22.0万円(月)

〇ゆとりある老後の生活費:平均34.9万円(月)

 いずれも、老後を夫婦ふたりで生活した場合の月々の平均生活費ですが、このデータは、正直、それほどあてにはなりません。

 なぜならば、1970年以降生まれの私たちにとっては、自分たちの親世代やそれ以上の年齢の方のデータで、かつ、平均値となっているからです。

 データはあくまでもデータであるため、これをそのまま当て込んで目安とするのはいささか問題があります。

 大事なのは、ご夫婦でどのような老後の暮らしをしていきたいかを考えることです。

 ご夫婦によっては、老後に必要な生活費が月15万円のご家庭もあるでしょうし、逆に月30万円の方もいらっしゃるかもしれません。

 また、ゆとりある老後の生活費についても、月20万円のご夫婦があれば、月40万円といったケースも考えられるでしょう。

 生活費は支出項目に該当しますが、具体的に寄与度(影響度)の高い項目は、たとえば、住宅関連費用や生・損保の保険料、介護費用、耐久消費財などの消耗品費、子どもや孫への資金援助、交際費、趣味・娯楽費用、旅行・レジャー代などが考えられます。

 一般的には、基本生活費(食費や水道光熱費など)は子育て期と比べ減少しますが、反面、収入が減るため、家計に占める支出金額の相対的な割合は増えていきます。

 これらについてあらかじめ想定し、家計簿をつけるなどにより、我が家の場合はどうなのかをご夫婦で話し合うようにしましょう。

 

 ここで注意しておきたいことは、生活費=目標貯蓄額ではないことです。

 老後の生活についてのあるあるとして、これらの生活費がいくらになるから、これぐらいの貯蓄が必要ですといったアプローチが散見されますが、これは間違いです。

 なぜならば、老後の収入やそれまでの貯蓄額を考慮していないからです。

 少し具体的に見ていきましょう。

 老後の収入は、通常、「公的年金(厚生年金・国民年金)」や「私的年金確定拠出年金個人年金保険など)」が中心になります。

 人によっては、再就職などをし、お勤め先からお給料をもらうケースもあるでしょう。

 また、生命保険のうち貯蓄性のある保険から満期一時金を受け取ることもあるかもしれません。

 お子さんから仕送りを受ける方も実際にはいらっしゃるので、これらをすべて含め年収を捉えていきます。

 次に退職金ですが、こちらは一時的な収入です。

 近年では、特にリーマンショック以降、退職金に充てる分を月々の給与に上乗せして支給しているため、退職金制度を設けていないという企業もあります。

 一般的には、退職金は企業の福利厚生制度として積み立てられていますが、中小企業の場合、自分の勤めている会社に退職金制度があるかどうかは事前に確認しておきましょう。

 また、退職金の使い道では、住宅ローンの残債を返すのに回したり、建替えやリフォームの資金に充当するなど、まとまった支出をすることも考えられます。

 このような場合、退職金をあてにする生活設計は成り立たなくなるため、老後の収入とは考えないようにしましょう。

 そして、それまで行ってきた貯蓄の累計額ですが、こちらは使い道として、月々の生活費の足しにしたり、冠婚葬祭や墓石に関する費用などの臨時的支出、介護状態になった場合の持ち出し費用、旅行やレジャーなどの娯楽費が考えられます。

 このように、それまでの貯蓄累計額は支出に転用していく可能性が高いため、使い道をあらかじめ検討しておく必要があります。

 

 このようなことから、老後の目標貯蓄額は次のポイントを考慮しながら考えていきます。

①何歳まで生きるのか

 完全リタイアの年齢を70歳とし、寿命を90歳とした場合、老後の生活期間は20年になります。

 つまり、何歳まで生きるのかを設定することで、準備すべき資金の計算期間をはじき出します。

②寿命までの収入と支出、貯蓄額がどうなるのか

 上記の例の場合、90歳まで20年生きると仮定しました。

 この間、生活をしていく必要がありますが、収入と支出、貯蓄額がどのように移り変わるかを見るためにキャッシュフロー(お金の流れ)を把握します。

③退職金の使い道を考える

 前述したように、退職金の使い道はご家庭によって異なります。

 退職後、住宅ローンの完済などで退職金をすべて使ってしまう場合は考慮する必要はありませんが、一部を残す場合、その金額も含めキャッシュフローを見ていきます。

④この結果、初めて老後に向けた生活資金の準備額が判明する!

 

 今回は、いつまでに、いくら、お金を貯めるのかについて見てきました。

 ポイントは、

①いつからが老後なのかを決める

②老後の生活をどのように送るか夫婦で話し合う

③生活費がいくらぐらいかかるかをあらかじめ検討する

④収入・支出・資産(貯蓄額)・負債の移り変わり(キャッシュフロー)を見える化する

⑤老後に向けた貯蓄額が判明する

という流れです。

 ファイナンシャル・プランナー(FP)事務所でのご相談では、一般的にこのようなシミュレーションを行い、老後のお金をはっきりさせていきます。

 本当は、いつまでに、いくら、お金を貯めるのかという問いに対する答えは、ここまでしないとわからないんですね。

 先ほどの生命保険文化センターのデータなどを活用し、老後の月々の生活費がこれぐらいかかってるから、これだけ貯めていこうというのは完全になしとは言いません。

 ただ、1970年以降生まれの私たちにとって、社会情勢の変化がライフプランの既定モデルを変えてしまっている以上、お金を貯めることは、昔に比べハードルが上がっているのも事実です。

 だから、お金を貯める工夫をしましょうって言われてるんですね。

 次回は、この工夫について、どのようにお金を貯めていくかに言及していきます。

 

 

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