シングルマザーのための所得税制「寡婦控除・特定の寡婦控除」
2017年8月17日の記事「所得控除ってなんですか? 所得税はライフステージによって違ってくる!?」で、所得控除は、ライフステージが変わったり、新たにライフイベントが発生したら、忘れずにちゃんと申告しましょうというお話をしました。
シングルマザーの方からのご相談対応がちょうど終わりましたので、今回は「寡婦控除・特定の寡婦控除」についてお伝えしていきます。
まず、「寡婦とは何か」から説明します。
言葉の意味としては「夫と死に別れて再婚していない女性」、もしくは「夫と離婚し、再婚していない女性」を指しますが、税務上は、以下の寡婦の定義のうちいずれかに該当する人となっています。
税務上の「寡婦」の定義Ⅰ.)
①夫と死別し、再婚していない人
②夫と離婚した後、再婚していない人
③夫の生死が明らかでない人
のうち、扶養親族がいる人、または生計を一にする子がいる人。
※この場合の子は、総所得金額等が38万円以下で、他の人の控除対象配偶者や扶養親族となっていない人
税務上の「寡婦」の定義Ⅱ.)
①夫と死別し、再婚していない人
②夫の生死が明らかでない人
のうち、合計所得金額が500万円以下の人。
また、次に該当する方の場合は「特定の寡婦」となります。
「特定の寡婦」の定義)
①夫と死別し、再婚していない人
②夫と離婚した後、再婚していない人
③夫の生死が明らかでない人
のうち、扶養親族である子がいて、かつ、合計所得金額が500万円以下の人。
平たく言うと、「経済的な状況」により定義が異なっていると考えてください。
〇寡婦の定義Ⅰ.では、子どもがいて、比較的収入が多いシングルマザー。
〇寡婦の定義Ⅱ.では、夫と死に別れ、子どもはいないが、経済的に苦しいシングルマザー。
〇特定の寡婦の定義では、子どもがいて、なおかつ、経済的にも困窮しやすいと考えられるシングルマザー。
このように考えると、「寡婦控除」<「特定の寡婦控除」という関係が成り立っていることがわかります。
寡婦に該当する場合、「寡婦控除」として「27万円」が所得控除されます。
一方、特定の寡婦に該当する場合、「特定の寡婦控除」として「35万円」が所得控除されます。
所得控除とは、収入から差し引かれる、いわば「生活をしていくうえでの経費」のようなものです。
詳細は、こちらの記事をご覧ください。
fp-office-kaientai.hatenablog.com
寡婦控除も特定の寡婦控除も所得控除のひとつなので、これをちゃんと申告すると所得税の軽減を図ることができます。
どれぐらい効果があるか、所得税率を5.0%とした場合の簡易計算をしてみます。
所得税の軽減効果)
〇寡婦控除:27万円×5.0%=1万3,500円
〇特定の寡婦控除:35万円×5.0%=1万7,500円
まだ申告していない方は、お勤め先での年末調整や年度末の確定申告により、これらの控除を申告すると、所得税が還付される可能性があります。
ちなみに所得税の還付請求ができる期間は、税計算期間の翌年の1月1日から数えて5年(還付金等の消滅時効)となっていますのでご注意ください。
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