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年金分割の請求は、離婚後、原則、2年以内に!

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 先日、離婚をされた30代女性の方から、離婚後の暮らしとお金にまつわるご相談をいただきました。

 内容は、①離婚後の保障設計(保険の見直し)、②子どもの教育・進学資金の準備、③老後の生活設計、④年金分割の4つです。

 今回はシングルマザーになった方からのご相談でしたが、離婚の理由についてはいつも聞かないようにしています。

 それよりも、今後の生活についてのお悩みをいかに和らげるかが主な課題となってくるため、離婚した場合、婚姻期間中の厚生年金を夫婦で分けることができる年金分割制度」についてお伝えします。

 年金分割制度には、夫婦がともに生活し築き上げてきた年金資産を分けるといった意味合いがあります。

 この制度ができるまでは、離婚した場合、一般的に妻の老後の生活が困窮する可能性が高かったと言えます。

 これを緩和するためにできたのが年金分割制度です。

 

 ファイナンシャル・プランナー(FP)として、年金分割制度について最も伝えたいことは次の点です。

年金分割の請求は、

離婚後、原則、2年以内に行うこと。

〇分割請求期限の「原則」

 分割請求の期限は、原則として次に掲げる事由に該当した日の翌日から起算して2年以内

離婚をしたとき

婚姻の取り消しをしたとき

事実婚関係にある人が国民年金第3号被保険者資格を喪失し、事実婚関係が解消したと認められるとき

 

 これをしっかりと認識したうえで、次に内容のお話をします。

 年金分割には2種類の制度があります。

①合意分割制度

②3号分割制度

 

 まずは「合意分割制度」から。

①合意分割制度

〇対象者

 平成19年4月1日以降に離婚等をした方

〇請求者

 当事者の一方からの請求

〇条件

 A.婚姻期間中の厚生年金記録標準報酬月額・標準賞与額)がある。

 B.当事者双方の合意または裁判手続により按分割合を定めた

 C.請求期限(原則、離婚等をした日の翌日から起算して2年以内)を経過していない。

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 専門用語で少し難しいかもしれませんので、簡単に説明します。

 先ほど、年金分割制度では「離婚した場合、夫婦がともに生活し築き上げてきた年金資産を分けることができるとお伝えしました。

 概念的にはこのような解釈で構いませんが、厳密にいうと、婚姻期間中の「夫のお給料(標準報酬月額)やボーナス(標準賞与額)」を「双方の合意や裁判の結果」により決めた「割合(按分割合)にもとづき分ける」ことができるという意味です。

 つまり、年金分割とは、年金を分けるのではなく、夫が稼いだお給料やボーナスを妻に分けることで、妻の年金原資にしてくださいという制度なんですね。

 

 

 一方、「3号分割制度」は次のようになっています。

②3号分割制度

〇対象者

 平成20年5月1日以降に離婚等をした方

〇請求者

 国民年金第3号被保険者であった方からの請求

〇条件

 A.婚姻期間中に平成20年4月1日以後の国民年金第3号被保険者期間中の厚生年金記録標準報酬月額・標準賞与額)がある。

 B.請求期限(原則、離婚等をした日の翌日から起算して2年以内)を経過していない。

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 3号分割制度も合意分割制度と同様、夫のお給料やボーナスを妻に分けることで妻の年金原資に充てていきます

 異なる点は、合意分割制度では「当事者双方の合意または裁判手続により按分割合を定めた」ことが条件になっていたのに対し、3号分割制度では、当事者双方の合意や裁判手続きにより按分割合を決める必要はなく、「平成20年4月1日以後の婚姻期間中の3号被保険者期間における相手方の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を2分の1ずつ、当事者間で分割することができる」ところです。

 つまり、合意分割制度では合意や裁判によって按分割合を6:4や7:3などにすることができますが、3号分割制度では完全に5:5になる点がポイントです。

 ちなみに3号とは、会社員や公務員の妻で、パート就労などをしていても厚生年金保険に加入していない方のことですが、婚姻期間中の年金が国民年金であるため、将来もらえる年金額が極端に少なくなってしまいます。

 このようなことから、夫の厚生年金の計算の基礎になる部分(標準報酬月額・標準賞与額)の1/2を分けることで妻のもらえる年金額を増やそうという意図があります。

 なお、合意分割の請求をした場合でも、婚姻期間中に3号分割の対象期間(平成20年4月1日以降で離婚するまでの期間)が含まれるときは、合意分割と3号分割の両方の請求をすることができます

 

 ここまでの内容がわかれば、あとは請求です。

 冒頭でもお伝えしたように、年金分割の請求は、離婚後、原則2年以内となっています。

 お近くの年金事務所にお問い合わせの上、合意分割制度を利用する場合は「当事者のうち一方」3号分割制度を利用する場合は「第3号被保険者(ここでは妻)」が請求することができるようになっています。

 忘れずに請求するようにしてください。

 

 

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