築地場外市場火災で学ぶ、リスクマネジメントと税金の関係。
7月3日に(木)に発生した築地場外市場火災。
築地場外市場は、築地4丁目と6丁目にまたがる縦400メートル、横130メートルの範囲内に飲食店や水産物店など計約400店が軒を連ねる民設の市場ですが、報道によると、このうち店舗などを含め少なくとも計7棟、935㎡が焼失したとのことです。
その中で気になったのが、青果業を営む年配の女性が言っていた、こんな言葉です。
「赤い炎が高く上がっていた。店の中はどうなっているのか。明日営業できるか心配だ」
今回は、ファイナンシャル・プラニング(資金計画)から見た、ご商売をされている方にとっての「リスクマネジメント」と「税務」について、築地場外市場火災を題材にしながら、押さえておきたいポイントをお伝えしていきたいと思います。
今回のケースは「火災」です。
通常、火災に対してのリスクマネジメントは、損害保険のうち「火災保険」でカバーしていきます。
マイホームの場合、火災保険で火事などの損害をカバーしますよね。
お店の場合も同じです。
マイホームと似たような概念でこのリスクに対して手当てをしていきます。
ただ、商品名が違うんですね。
損害保険各社それぞれですが、お店の火災保険の場合、「店舗総合保険」などとネーミングされています。
〇店舗総合保険の補償内容
火災、破裂・爆発、落雷、風災・雹災・雪災、建物外部からの物体の落下・飛来・衝突等、建物内部での車両またはその積載物の衝突・接触、給排水設備の事故等による水漏れ、騒擾・集団行動、労働争議に伴う暴力行為や破壊行為、盗難による窃盗・損傷・汚損、水災、持ち出し中の家財の損害
補償内容について細かく覚える必要はありませんが、お店の場合も、マイホームと同じく、火災保険で補償されています。
さて、店舗総合保険などのお店用の火災保険は、あくまでも建物や家財に対する損害(物損)を補償するものです。
つまり、モノ保険であるため、とりあえずご商売の立て直しを図るうえでは最低限必要な保険といえます。
ただ問題は、冒頭の青果業を営む年配の女性が言っていた、ひと言。
「明日営業できるか心配だ」
いわゆる「休業損失」をどうカバーするかという問題ですが、火災などで営業活動をストップせざるを得ない場合、お店用の火災保険では補償してもらえません。
このようなことから事業用の保険についても検討しておく必要があります。
事業用の保険も、損害保険各社で名称が異なります。
一般的には「事業活動総合保険」などのようにネーミングされ、補償内容は次のような4つの補償目的で組み合わせることができるようになっています。
〇事業活動総合保険の補償内容
①建物や設備・什器・商品・製品などの損害に対する補償
②休業損失による損害に対する補償
③損賠賠償請求による損害に対する補償
④業務中の労働災害に対する補償
①は、店舗などの建物が火災の被害に遭った、機械設備が壊れたなど、物的損害をカバーする補償、②は、火事などでお店の営業ができなくなった、食中毒などが発生し、お店を休まざるを得なくなったなど、休業損失をカバーする補償、③火災により借りている建物に損害が出てしまった、お客さんに火傷を負わせてしまったなど、相手から損害賠償をカバーするための補償、④は、従業員が勤務中に交通事故に遭い死亡した、通勤途中で自転車から転倒しケガをしたなど、業務中の労働災害をカバーする補償となっています。
いずれも事業活動を営む上での万一の場合を補償する内容となっています。
ご商売に合った補償を選び、上手に組み合わせていくようにしましょう。
ちなみに、地震や噴火、津波など、事由によって保険金が支払われない場合(免責事由)があるので、店舗用の火災保険や事業用の保険を検討する際はあらかじめ確認するようにしてください。
ここまでは、損害保険を活用したリスクマネジメントのお話でしたが、次は、損害が発生した後の「税務」について見ていきたいと思います。
築地場外市場火災のケースのように、火事でお店が焼失してしまった場合、個人・法人を問わず、その損失額などが「損金」として認められています。
具体的に損金として認められる費用はこのようになっています。
〇災害により滅失・損壊した資産など
①商品や原材料等の棚卸資産、店舗や事務所等の固定資産などの資産が災害により滅失・損壊した場合の損失の額
②損壊した資産の取壊し、または除去のための費用の額
③土砂その他の障害物の除去のための費用の額
〇復旧のために支出する費用
①被災資産についてその原状を回復するための費用。
②被災資産の被災前の効用を維持するために行う補強工事、排水、土砂崩れの防止等のために支出する費用。
③①・②を除く被災資産について支出する費用。
要するに、店舗や事務所、商品、原材料などの損失額と、災害を被った資産について復旧にかかった費用などが損金として認められているということです。
また、法人企業では「災害による損失金の繰越し」が、個人事業主では「被災事業用資産の損失の繰越し」が認められています。
〇法人企業に対する「災害による損失金の繰越し」制度
法人の各事業年度開始の日前10年以内に開始した事業年度において生じた欠損金額のうち、棚卸資産、固定資産等について災害により生じた損失に係るもの(災害損失欠損金額)がある場合には、その事業年度が青色申告書を提出しなかった事業年度であっても、その災害損失欠損金額に相当する金額は、その各事業年度において損金の額に算入されます。
〔要するに〕
事後10年間にわたり、災害損失欠損金額を損金として毎年計上できる。
〇個人事業主に対する「被災事業用資産の損失の繰越し」
事業を営む個人のその年の前年以前3年内の各年において生じた純損失の金額のうち、棚卸資産、固定資産等について災害により生じた損失に係るもの(被災事業用資産の損失の金額)がある場合には、その損失の生じた年分が青色申告書を提出しなかった年分であっても、その被災事業用資産の損失の金額に相当する金額は、その年分の総所得金額等の計算上控除することとされています。
〔要するに〕
事後3年間にわたり、被災事業用資産の損失の金額を総所得金額から控除できる。
これらは、あなたの会社の場合、大変なことに見舞われたので、一定の期間、無理して税金を払わなくてもいいですよ、という税務上の救済措置といえます。
このように、万一の場合、どうすべきかを考えておくことも、ビジネスにとってはとても大切なことです。
リスクマネジメントと税務は、こんな風にしっかりと関係してたんですね。
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