FP OFFICE 海援隊|1970年以降生まれと語るお金の話

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人手不足なのに、なぜ賃金が上がらないのか。

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 人手不足だと、普通、賃金が上がるって思いますよね。

 労働市場では「需要>供給」状態なので、働き手が欲しいならお給料を上げてでも雇うと事業主は判断します。

 なのになぜ、賃金が上がらない?

 アベノミクスでは、賃金を上げることで消費を促し、景気を良くすることをデフレ脱却へのひとつの方策としています。

 実際、賃金は上がってきています。

 正社員の賃金上昇率は微増ですが、非正社員は正社員の約4倍ほど上がっているそうです。

 人手不足も影響し、労働市場では需給の逼迫による自然増の動きもみられます。

 にもかかわらず、『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』という本が注目を集めています。

人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか

人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか

 

 なぜでしょうか。

賃金上昇の実感がわかない・・・ 

 人手不足なのはみんなわかっています。

 賃金を上げようとしているのも、おおよそ国民には伝わっているでしょう。

 普通、人手不足だと、それなりにお給料は上がるだろうと期待します。

 でも、実際にはそこまでの賃金上昇ではない。

 だから、「えっ、賃金上がってるの?」という印象になり、『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』という疑問を持つようになっているんだと思います。

 

 

(1)人手不足なのにそれほど賃金が上がらない理由①

 単純に、会社の業績が良くなれば社員・従業員の賃金は上がっていくはずです。

 それが日本全体に広がって景気が良くなっていくと、さらに賃金は上がりやすくなります。

 ましてや人手不足ならなおさらです。

 でも、賃金がそこまで上がらないのは、根本的にそこまで企業の業績や国内の景気が回復していないからです。

 

(2)人手不足なのにそれほど賃金が上がらない理由②

 逆に賃金が少し上げられるようになった理由を考えると、マクロ的には世界経済がリーマンショック後にある程度持ち直したからと言えます。

 日本経済についてもその恩恵が受けられているため、以前に比べ賃金が上がりやすくなっています。

 ただ、リーマンショック後、企業は景気のショックに対し警戒心を捨てていません。

 いつまた金融恐慌のようなショックが訪れ、会社の業績が悪くなるかもしれないので、人手が足りない状況でも大幅に人件費を増やすようなリスクを取ることが難しいというのがふたつ目の理由です。

 

(3)人手不足なのにそれほど賃金が上がらない理由③

 団塊の世代の人たちが65歳を超え、一気に労働市場から退出してしまいました。

 これに加え、社会に出ていく若者の数が年々減少しているため、全体的な生産年齢人口(15歳から64歳までの人口)が減っているというのが人口動態から見た人手不足の原因です。

 通常なら労働力が不足しているので、賃金を上げて雇用を確保しようという意識が働きますが、退職前世代(40代後半~50代)の賃金が一定の水準で高いため、それより下の年齢の人たち(1970年以降生まれの人たち)の賃金が比較的抑えられる傾向が続いています。

 最近では、新卒社員の初任給がかつてに比べ上がったというニュースがありましたが、社内全体で賃金の支給バランスを組み替えているのかもしれません。

 多めに支払っている人の基本給を少し下げ、少なめに抑えていた人の基本給を少し上げることで、人件費の調整を図っていく。

 そして、賃金を増やす場合は、正社員の場合は業績に連動させられるボーナスを、非正社員の場合は時給を上げていくことで待遇改善を行い、万一の業績悪化にも対応できるよう給与体系に弾力性を持たせているようです。

 このように、企業にとっては社内的な人件費の調整を行う必要があるため、いくら人手が足りないといっても軽々に賃金を上げるのは難しいというのが実情でしょう。

 

(4)人手不足なのにそれほど賃金が上がらない理由④

 賃金を上げられる産業(企業)と上げにくい産業(企業)はもちろんあると思います。

 比較的賃金が上がりやすい産業は業績が良いため、賃金を上げてでも働き手を雇う力があります。

 一方、それほど業績が良くない産業では、必然的に賃金の上げ幅は小さくなります。

 人為的な賃金上昇政策を国が行っているため、将来の業界の発展や企業の成長力をあまり期待できない会社では、固定費である人件費の増加は足かせになるので、なかなか賃金の引き上げに踏み込めないのも無理はありません。

 また、産業自体が国の方針に依存しているような医療・福祉・介護などの場合、一般的な企業と違い自力で賃金を上げることは困難です。

 このように、企業が描く将来に対する不安や業界の構造的な問題も賃金を上げにくい理由として指摘できます。

 

(5)人手不足なのにそれほど賃金が上がらない理由⑤

 超高齢化社会というのも企業が賃金の引き上げに二の足を踏む理由と言えるでしょう。

 高齢者の人口が増えるにつれ、国の社会保障費は膨らんでいきます。

 これを少しでも抑えるために、国は健康保険や介護保険、年金、雇用保険などの社会保険料を毎年のように引き上げています。

 企業は社員・従業員の各社会保険料を半額、もしくは一部負担しており、賃金を上げると直接的に人件費が増えてしまうので、いくら人手不足でもそう簡単に賃金を引き上げることができません

 

(6)人手不足なのにそれほど賃金が上がらない理由⑥

 最後に、よく指摘されることですが、日本企業の国際競争力の低下も挙げられます。

 日本は先進国でもあり、また四方を海に囲まれているため、新興国や陸続きの国と比べると生活コストが高い傾向にあります。

 特に貿易面では、日本で作られる物資は生産コストが高いため、円安を維持しなければ他国との価格競争に勝つことが難しくなります。

 新興国などの新しい国々が経済発展を遂げる中で、海外へ安く品物を輸出しているため、それらよりも高い日本製の商品が買われにくくなっています。

 必然的に日本企業の収益は落ち、固定費として重くのしかかる人件費をそう易々と上げようという気にはなりません。

 これについては、世界経済や貿易相手国の経済環境、取引先の業績、為替など様々な要因が絡みますが、マクロ的に見るとこのような傾向があると言えるでしょう。

 

 ファイナンシャル・プラニングでは、実務上、ご相談者様の将来の収入状況をキャッシュフロー表にプロットしていくことになります。

 収入は、マクロ面・ミクロ面双方から影響を受けるため、時折、このような傾向分析をします。

 今、考えていることは、次のステージである「人手不足により“本格的に”賃金が上昇していくタイミングはいつなのか」です。

①超高齢化社会のもとで日本経済は果たして成長していくのか。

②成長する場合、変わらない場合、成長しない場合、それぞれについて、人手不足の程度がどのようになり、それが賃金の変化にどのように影響してくるのか。

③それぞれのパターンで影響が出るタイミングがいつなのか。

 おそらく10年~15年後、今の退職前世代(40代後半~50代)の人たちが退職していくにつれ、雇用環境は少しずつ変わっていくんだろうと思います。

 スピードは結構、早目かもしれませんが・・・。

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