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日銀:金融緩和の継続から見る「3年後の僕らの未来」

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 7月20日(木)に行われた日銀の金融政策決定会合

 アベノミクスが始まって以来、日銀が目指している2.0%の物価目標の達成時期を2019年度に先送りにし、現行の金融政策は維持すると発表しました。

 このニュース、私たちの生活に根底からかかわってくる内容なので本当はかなり重要なんですが、なんせわかりにくい。

 ちょっとだけ解説します。

jp.reuters.com

 民主党から自民党に政権が移り、安倍政権では「ニッポンを取り戻す」のスローガンのもと「アベノミクス」を積極的に推し進めています。

 アベノミクスでは、第1次アベノミクス:①金融緩和、②財政出動、③成長戦略第2次アベノミクス:①強い経済、②出生率の上昇、③介護離職者ゼロと、それぞれ3つの大きな政策を実行しています。

 このニュースは、第1次アベノミクスの中でも①の金融緩和に関連する内容ですが、2016年1月にマイナス金利政策が始まり、それが今でも続いていて、途中経過がどうなっているのかを知らせてくれる内容です。

 

 金融政策には大きく分けて2つの方法があり、ひとつは「金融引き締め」、もうひとつが「金融緩和」です。

 前者は、景気が良くなり、その行き過ぎを調整するために行うもの、後者は、景気が悪いときに景気を回復させるために行うものです。

 アベノミクスでは、デフレから脱却するために金融“緩和”策を用いています。

 金融緩和は、簡単に言うと、お金をたくさん刷ってみんなの手元に行き渡らせ、みんなにお金を使ってもらうことで「消費」を促し、会社の「売上」を増やし、日本経済を良くしていこうという政策です。

 実際は、お金を刷って日本中の人たちにばらまくようなことはしませんが、その代わり、日銀が市場(マーケット)に出回っている国債投資信託を買い取ったり、民間の銀行が日銀にお金を預ける利率を下げたりすることで、市場に出回るお金の量を調整していきます。

 なので、通常、市場(マーケットでの取り引き)を通じて金融機関にお金が流れ、そのあと、企業や家計に回っていきます。

 ちなみに新聞などでは、金融緩和の話題に触れるときに量的緩和「質的緩和」という言葉が出てきますが、前者は「どれぐらいのお金の量を市場に流すのか」、後者は「どのような方法でお金を市場に流すのか」と理解するとわかりやすいと思います。

 

 さて、金融緩和では、いろんな方法を使って世の中に出回るお金の量を増やそうとします。

 でも、永遠にそんなことをしているわけにもいきません。

 なので、金融緩和を終わりにするメド(=目標)を決めようということになりました。

 それが「GDP600兆円、物価上昇年率2.0%」という目標です。

 GDP(国内総生産)は日本の経済力と考えてください。

 日本国内で生み出されたモノやサービスの付加価値の総額です。

 GDP600兆円という目標を達成するには、名目GDP成長率が年率で3.0%必要と言われていますが、物価の目標値である2.0%を考慮して計算すると、実質のGDP成長率は年率で1.0%になります。

 一方、物価はモノやサービスの値段です。

 指標は消費者物価指数(CPI)です。

 GDPを600兆円に増やし、物価の上昇率を2.0%にしていく。

 これが「金融緩和の出口戦略」とされ、デフレ脱却への道筋が示されるようになりました。

 

 そんな中での冒頭のニュース。

①目標である物価2.0%の達成を2019年度に先送り

②金融緩和は現状を維持

 この意味は、

①デフレ脱却まで、もう少し時間がかかりそうです。

②なので、まだ世の中に出回らせるお金の量を減らしません。

となります。

 実際には、若干減らしてきてはいるんですけどね。

 

 こう言われると、読み手にとっては「え~、まだデフレなの~」、「早く景気良くしてくれよ~」と少しテンションが下がってしまうかもしれませんが、実を言うと、今回の金融政策決定会合でアナウンスされた内容は、前回4月の内容と比べるとほとんど変わってないんです。

 強いて言うならば、物価の見通しを下方修正したぐらいで、思ったよりも物価が上がってこないため、2019年度に目標値の達成をずれこませたというだけの話です。

 

日銀:経済・物価情勢の展望(2017年7月)より

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 この表には、先ほどのGDPと物価の目標値に近づいていくうえでの「毎年の見通し」が示されています。

実質GDPの伸び率は、2019年度にかけて下がっていく。

消費者物価指数の伸び率は、2019年度で達成される。

 GDPは実質値なので、物価を考慮すると、見通し上はデフレからの脱却が完成しています。

 『経済・物価情勢の展望(2017年7月)』では、今後の日本経済の見通しをおおよそ前向きに捉えていますが、同時に今回の後ずれ原因をこう指摘しています。

賃金・物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が企業や家計に根強く残っていることも影響している。

②企業は、人手不足に見合った賃金上昇をパート等にとどめる一方で、省力化投資の拡大ビジネス・プロセスの見直しにより、賃金コストの上昇を吸収しようとしている。

 ①は、いわゆる「デフレマインド」というやつです。

 「将来、景気なんかよくならないよ」というあきらめムードが企業活動や家計消費の手かせ・足かせになっているため、消費が活発にならず、物価の上昇が遅れているという指摘です。

 ②は、「賃金の上昇が非正社員の中でもパート・アルバイトに偏っているため、労働者全体で収入の増加に結びついていないこと」、「企業が生産性を向上させるためにITやAIなどを含め業務の効率化を図っているので、人件費が抑えられるようになっていること」を消費が振るわない原因とし、これが物価の伸びを抑えていると指摘しています。

 いずれも、その後に続く文章を読めば、これらは過渡期における問題点だとわかります。

 

 ただ、一方で以前よりこんな指摘があります。

金融緩和政策だけではデフレからは脱却できない!

 リフレ・反リフレという言葉を聞いたことがあるかもしれません。

 リフレとは、リフレーション(再インフレ)の略ですが、前述した金融緩和政策を中心にデフレから抜け出そうという考え方です。

 これに対し反リフレは、金融緩和には賛成しつつも、もっと積極的に財政出動をしていくべきだとする考え方です。

 どうしてこのような指摘がされているのかというと、アベノミクスでの金融緩和は「異次元緩和」と呼ばれています。

 開始以来、史上類を見ないほどの大量のお金を市場に流し込み、一定の成果があったにもかかわらず、消費税率が5.0%から8.0%に引き上げられ、一時的に消費が落ち込んでしまいました。

 その後、消費は回復しましたが、それでも目標である2.0%の物価上昇率を達成するには遠く、金融緩和策に限界が感じられるようになったからです。

 どちらが正しいのか。

 基本的な方向性は一緒なので、どちらが良い・悪いということではありませんが、これはお金をどのように世の中に行き渡らせるのかという方法論の違いです。

リフレ:金融緩和(多)+財政出動(少)

反リフレ:金融緩和(多)+財政出動(多)

 簡単ですが、このように特徴を分けると、財政出動の量と質の問題であることがわかります。

 

 そこで、この国の経済力の源泉がどうなっているのかを確認するために、「国民経済統計」という内閣府のデータをもとにGDP(支出側)デフレータの推移をグラフ化してみました。

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 これは、支出側のGDPデフレータですが、基本的にGDPは生産額=支出額でもあるので、この違いはあまり気にしないでくださいね。

 GDPデフレータは、名目GDP/実質GDP×100という計算式で算出されますが、このチャートでは増加率ではなく実数を参考に作成しています。

 GDPデフレータの意味は、実質GDPに対する名目GDPの膨張率のようなものです。

 経済の実態を見るうえでは、GDPデフレータを使うと、経済そのものの勢いを見ることができます。

 一目瞭然ですが、アベノミクスにより、それまで下がり続けていたGDPデフレータは2013年度をメドに下げ止まりました。

 その後は2015年度まで上昇し、2016年度では足踏み状態にあります。

 これがこの国の勢いです。

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 次に国内総生産の内訳のデフレータをみていきましょう。

 次のグラフも国民経済統計をもとに作成したものです。

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 初めに用語の説明をしておきます。

①民間最終消費支出

 これは、家計などの消費関連支出です。

②民間住宅

 これは、戸建てやマンション、アパートなどの住宅関連支出です。

③民間企業投資

 いわゆる、企業が行う設備投資です。

④政府最終消費支出

 これと次の公的固定資本形成がややこしいんですが、政府最終消費支出は、国が使うお金の中でも「社会保障給付」や「物件費・備品購入費など」、「ダムや公共施設などの社会資本の減価償却費に相当する固定資本減耗」、「公務員の人件費」、「教育関連支出」などが該当します。

 固定資本減耗は、ダムや公共施設などの価値が毎年減っていくという意味で、その分を使ったお金として計上していきます。

⑤公的固定資本形成

 これは、ダムや道路などの社会資本設備、公団・公社の設備投資や住宅投資が該当します。ただし、土地代は含まれません。

⑥輸出

 これは、外国にモノやサービスを売った金額です。

⑦輸入

 これは、外国からモノやサービスを買った金額です。

 これらの合計が支出側から見た国内総生産になります。

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 1994年度から2016年度の間で大きな変化があるのは、「輸出」と「輸入」です。

 輸出は減り続け、輸入は増え続けています。

 それと目立つのは、「民間企業設備」が減り続けていて、それ以外の「民間最終消費支出」、「民間住宅」、「政府最終消費支出」、「公的固定資本形成」の4つは少し減っていますが、それほど変化はありません。

 まとめると、

①貿易力が弱くなっている。

②企業の未来への投資が減っている。

③それ以外はあまり変わらない。

ということになります。

 貿易力が、国内総生産の伸びを縮小させている一番の原因だということがわかりました。

 要するに、売れてないんですね、日本のモノやサービスが。

 だから、日本経済の勢いが鈍っているということなんでしょう。

 それでは、輸出-輸入=純輸出が減っている原因はなんでしょうか。

①輸出企業の海外移転

円高

 構造的にはこのふたつが原因と考えられます。

 これを改善するために、たとえば、日本の会社が国外に出ていかないように法人税を下げたり、海外からの旅行客を増やしたり、大規模な金融緩和を通じて為替を円安に誘導したりと、アベノミクスではいろいろと努力を重ねています。

 それでも昨年の状況では、輸出も輸入も大幅に落ち込んでいます。

 2016年度はおおよそ円高に振れていたので、この影響がかなりあったんだと思います。

 中国人観光客が減っていますというニュースがありましたが、これも円高の影響だったんですね。

 

 このように国民経済統計を眺めていくと、日本経済の勢いがなぜ鈍くなっているのかがよくわかります。

 一番の問題は、貿易面で儲かっていないこと。

 貿易面で儲かっていないのは、日本の企業が海外に行ってしまったから。

 日本の企業が海外に行ってしまったのは、円高を放置し続けてきたから。

 そして、長い間、円高にならざるを得ない状況に置かれているのは、歴史的に見ればプラザ合意がそのきっかけになっています。

 結局、通貨政策が大元にあるんですね。

 

 金融緩和も必要です。

 財政出動も必要です。

 消費や会社の売上を増やすことも必要です。

 そして、賃金を引き上げることも必要です。

 経済政策を総動員し、優先順位をつけ、着実に実行していると思いますが、2016年以降、その推進力が鈍っている感じがします。

 

 為替については、外的な要因に影響を受けますが、欧米の中央銀行はおおよそ金融引締に少し舵を切りました。

 直近では、アメリカの物価上昇率が思ったほど高まっていないことやトランプ政権の政策実効性への猜疑心から、若干ドルが売られる展開になっています。

 しかし、欧米の中央銀行のスタンスと日銀のスタンスに乖離が生まれているので、方向感は円安・ドル高、円安・ユーロ高といったところでしょう。

 ただ、方法論としては、金融緩和に大きく依存した為替誘導策ではなく、もう少し財政出動の総額を増やし、実体経済にお金が回りやすい形で消費と投資を促すようにしてもいいようなタイミングなんじゃないかとも思います。

 2019年10月に予定されている消費税率の8.0%から10.0%への引き上げ。

 冒頭のニュースのとおり、GDP600兆円と物価上昇率2.0%の目標を達成しようというのも2019年

 東京オリンピックパラリンピックの前年であるこの年、オリンピック・パラリンピック関連の投資が一巡すると『経済・物価情勢の展望(2017年7月)』では指摘しています。

 だとするならば、おそらく今後3年の経済・財政政策をどうするのかで、本当に日本経済がデフレから脱却できるかどうかが決まってくるでしょう。

 消費税率は上げない。

 金融緩和をしつつ、財政出動の規模を増やす。

 これで決まりのような気がするんですが、今の国内の政治情勢、なんか変な感じだしなぁ。

 その後の時代を生きるのは、私たち、1970年以降生まれなんですけど・・・。

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