子育て・老後*「1970年以降生まれのライフ&マネー塾」

子育てしながら、お金を貯める。ちょっと工夫して生きてみるのが、1970年以降生まれの僕らの人生。

リスクについての説明義務とは。潮目が変わり出した金融市場と昨今流行りの金融商品。

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 ファイナンシャル・プランナー(以下、FP)事務所を営んでいて、ここ数カ月、困っていることがあります。

 保険業界と不動産業界のセールスの人が金融・経済についてどれぐらいわかったうえでお客さんに接しているのか、少し心配になっています。

 FP事務所の使命は、「暮らしとお金」についてお悩みをうかがい、改善・解決していくことです。

 その過程で、税理士や社会保険労務士司法書士などの専門家や銀行、証券、保険、不動産業界の方と連携し、問題の解決を図ります。

 なので、FP事務所にご相談される方は、FPに対し、自分や家族にとって最適な提案を期待しています。

 ファイナンシャル・プラニングのご相談では「お金」の話が中心になるので、資産形成や資産運用の頻度がある程度高くなります。

 資産形成や資産運用では、「どのようにして老後の生活資金を貯めるのか」、「どのようにして教育資金を準備するのか」といった方法論をFP自身がグランドデザインとしてまとめ、必要な場合に金融機関や不動産業界の担当者に説明し、最適な商品プランの提示をいただき、最終的に総合提案という形で顧客に対し問題の解決と実行を図ります。

 

 本当は、お金を貯める・増やす方法はいろいろとあります。

 預貯金、公社債、保険、外貨預金、投資信託、株式、不動産投資、金、商品取引などの方法が一般的ですが、教育資金の贈与や確定拠出年金、NISA(少額投資非課税制度)などの税制を活用した方法、また、会社で採用されている財形制度という積立制度を利用するのもひとつの手です。

 

 ここ最近目立つのは、保険については「外貨建終身保険・外貨建個人年金保険」の提案、不動産投資については「分譲マンションの投資用物件」の提案です。

 このような提案を受けた場合、FP事務所としては、必ず、裏取りを含め商品の内容を紐解き、利回りやリスクについて計算をしたうえで評価を下します。

 かなり手間がかかりますが、特にFPの上級ライセンスであるCFPは、倫理規定により「顧客利益の保護」が厳しく定められているため、必要な場合はこのような細かい分析を行うことがあります。

 このような分析の結果、外貨建の保険商品や投資用の不動産商品は、リスクを取ってでもお金を貯めたい・増やしたいという方にとっては優れていると判断しています。

 

 ただ、問題は、これらの商品を販売側・購入側双方がどれぐらい理解しているのかということです。

 金融商品販売法や消費者契約法では、原則、販売側に説明義務があります。

 これは販売側は購入側よりも専門性が高いため、つまり、購入側よりも多くの情報を持っているため、契約上の弱者保護の観点から、顧客に対し包み隠さずすべての情報を開示する義務があるという意味です。

 実際は、説明を受けたからと言って100%理解できるものではありませんので、販売サイドにとってはこの点が最も苦慮するところではないでしょうか。

 

 とは言うものの、販売側がどこまで理解して購入者に説明しているのか、少し疑問を感じています。

 これは外貨建の保険商品にも投資用の不動産商品にも共通する点ですが、おそらくリスクについて販売サイドがよくわかっていないような気がします。

 もちろんみんながみんなそうだとは言いませんが、実務経験の中でそのような印象を受けます。

 たとえば、外貨建終身保険

 これは死亡保険です。

 一般的には、保険料を円からドルに換金して支払い、死亡した場合の保険金や途中解約した場合の解約返戻金はドルから円に換金して受け取る仕組みになっています。

 加入後は定期的に利率の改定が行われますが、積立利率にもとづき利息が付されていきます。

 積立利率には最低保証があり、これが「安心です」というセールストークにつながっているようです。

 このようなことから、購入サイドも魅力を感じてしまうんですが、為替の変動リスクについての理解がほぼ満たされていない印象を受けます。

 販売側にとっては、為替の変動リスクについての説明は「為替が変動することで損失を被るリスクがあります」と言えばいいだけなので、一応の説明義務は果たしています。

 しかし、これは、私たちFP事務所からすると、必ずしも説明義務を果たしているとは言えません。

 なぜならば、「為替変動のリスクとはなにか」、「どのような場合に円安になるのか」、「どのような場合に円高になるのか」、「今の金融・経済の情勢がどうなっているのか」、「これからの金融・経済の動向についての情報にはどのようなものがあるのか」など、購入側に事実としての客観情報の説明をしていくことが、本当のリスクへの理解につながるからです。

 

 投資用の不動産商品についても同じことが言えます。

 たとえば、分譲マンションのワンルームを購入し、誰かに貸すことで入居者から賃料をいただくという、プチ不動産経営。

 ここ近年、大企業にお勤めの会社員や公務員などの間で流行っています。

 目的は、外貨建終身保険同様、退職後の生活資金を補うためです。

 大方、銀行などからの借入れで投資用物件を購入し、繰上げ返済しながらなるべく早めに完済し、その後は賃料を得ながら老後の副収入を得ることを目指します。

 相続・贈与対策にも活用できるので上手な資産形成のひとつと言えますが、空室や売却時の値下がりなどのリスクがあるため、販売サイドとしてはリスクについての説明義務がもちろん発生します。

 しかし、大概が「都心の再開発地域にある物件なので空室リスクはほとんどないと考えています」とか、「資産の目減りはもちろんしますが、売却よりも、賃料を得ることが目的なので、老後の生活資金を準備する方法としては最適です」とか、こんなセールストークになっています。

 FP事務所としては理屈がわかっているので、商品性に一定の評価を下していますが、「投資エリアの人口の推移がどうなるのか」、「投資エリアの不動産価格の推移がどうなっているのか」、「日本の金融政策だけでなく、世界の金融政策の方向性がどうなっていくのか」などの客観的な情報の積み上げがなければ購入側にとって不利益になる可能性があるので、リスクについて独自に分析するようにしています。

 

 外貨建の保険も、投資用不動産も、平たく言えば「リスクのある商品」です。

 リスクは“危険”という意味ではなく、“不確実性”という意味なので、リスクについて説明する場合は、はっきりしないことを客観的な情報にもとづき浮かび上がらせることがまず第一に必要になってきます。

 次に、浮かび上がった不確実な点について説明します。

 そして、購入側とともに不確実な点について打開策を検討していくという、3つのプロセスが「リスクについての説明」です。

 

 販売側の人たちに一抹の不安を抱いている理由は、リスクについての説明の意味を「リスクがあることを伝えればいい」と誤解していて、「商品そのものがリスクとどのように向き合っているのか」や「リスクを回避する仕組みがどのようになっているのか」まで深く見つめない傾向にあると感じているからです。

 商品を開発している人にとっては、この点が見てほしいわけで、ここに自信を持って購入側に提示してほしいと思っているのではないでしょうか。

 

 資産市場の状況は日々、刻々と変わっています。

 7月に入り、これまでと比べ、にわかに金融政策の記事が増えている印象です。

www.nikkei.com

 外貨建の保険商品も、投資用の不動産も、商品設計の性質上、国の行う金融政策に影響を受けます。

 この記事は、昨年から注目されていたアメリカの金融政策の最近の変化が、今後、どのように資産市場や金融市場に影響を及ぼすのかについて言及しています。

 欧米が金融緩和の意向を示し、日本の長期金利もそれを受けて一瞬上がったため、株式市場が急落したという内容です。

 昨今の世界の金融・経済情勢は、リーマンショック後の景気回復に一定のメドがつき、どちらかというと資産市場(株式市場など)に過熱感が生まれています。

 特に欧米では、金融緩和の出口戦略を模索する動き、つまり、金利を少しずつ引き上げていこうとしていますが、これには資産市場の熱を冷ます効果があります。

 一方、日本の場合、依然としてデフレから脱却できていないため、個人的にはマイナス金利政策を解除し、通常の金融緩和策に戻せばいいと考えていますが、お国の事情から、いずれにせよ、金融緩和政策を継続せざるを得ない状況です。

 

 外貨建の保険は、金利と為替、資産市場の動きに影響を受けます。

 ドル建ての場合、日米の金利差が拡大するので、為替はどちらかというとしばらく「円安・ドル高」に向かっていくと思われます。

 金利には引き上げ圧力がかかってくるので、積立利率は幾分上がっていくでしょう。

 アメリカの株式市場は、まだ大幅な下落局面には向かわないと思いますが、一定の水準に達した後、急落する可能性があるため(さきほどの日経新聞のような理屈)、マネーが一気に逆流した場合、為替が反応し「円高・ドル安」局面が訪れる可能性があります。

 これが、外貨建の保険についての為替リスクで、この理屈を説明できなければ説明義務を果たせたとは言えません。

 

 また、投資用不動産については、金利と資産市場の動きに大きく影響を受けます。

 金利については銀行の借入金利が上がると、購入側の調達コストが上がってしまうので投資利回りが悪化します。

 これについては、日銀は金融緩和政策を維持せざるを得ないため、日本では金利は低いまま推移すると考えているので、それほど問題ないでしょう。

 問題は、資産市場、特にマネーが不動産市場から逃げていく可能性があるという点です。

 アメリカの金融政策の影響がまだそれほど出ていないので、当面は大きな問題はないと考えていますが、資産市場のトレンドが変わり、マネーの逆流が起こってしまった場合、日本の不動産市場からもマネーが引き上げられていきます。

 東京オリンピックパラリンピックに向け、特に東京では再開発が行われているので需要は比較的旺盛と見ていますが、世界的なマネーの潮流の変化が起こるタイミング次第では、不動産市場にも大きな影響が出てくるでしょう。

 

 今回、外貨建の保険と投資用不動産を題材に、このような話題を取り扱ったのは、世界的な金融・経済の潮流の変化が目の前で起こり始めているからです。

 販売側はプロフェッショナルです。

 一方、購入側は素人です。

 契約を結ぶうえでは対等の立場ですが、現実は、知識や情報などの面で「販売サイド>購入サイド」という構図になっています。

 だからこそ、契約上の弱者保護=顧客保護の観点から、販売側には説明義務があり、特にリスクのある商品については「リスクがあることを伝えればいい」ということではなく、「リスクの性質や仕組み、打開策などの方法」を熟知することが求められています。

 何のために金融業界にいるのか、また不動産業界にいるのか、顧客にとっての自分の責任は何なのかをしっかり理解し、一緒に学んでいければと願っています。

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