FP OFFICE 海援隊|1970年以降生まれの「ライフ&マネー塾」

これからの時代、変わりゆく常識を少しだけ早くキャッチし、人生に活かしてみる。

エンディングからの逆算。ファイナンシャル・プラニングから考えたすっきり終活論。

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 今月は不思議なもので、顧客の方から「子どもが産まれた」、「親が亡くなった」と、生と死に同時に直面させられるようなご報告を受けました。

 こういうのを体験すると、なんだか生きることと死ぬことが同じ意味に思えてきて、本当はそこにはなんら違いはなく、だから人は生きているだけなのかもしれないとか、よくわからないことをごにょごにょ考えています。

 1970年以降生まれの僕らにとっては、まだ少し遠いお話。

 できれば退職前の準備として想定しておきたい、これから大事になってくる考え方について、今回はお伝えしていきたいと思います。

 

 現在、一般的にこの国では定年退職の年齢が60歳、定年を迎える段階でそのまま退職するのか、再就職するのかを決め、再雇用を受けた場合、完全リタイアになるのが65歳となっています。

 だいたい50歳ぐらいからが退職準備世代に当たりますが、これぐらいの年齢から「老後をどのように暮らしていけばいいのか」についてより具体的に考えるようになります。

 お子さんが巣立ち、夫婦ふたりで生活していく「前リタイアメント・ステージ」。

 この段階では、まだ「暮らし」や「お金」など、生きることを前提にした方法論が話題の中心です。

 

 その先に待っているのが、いよいよ定年退職や完全リタイアです。

 年齢的には60歳以降、老後の生活がかなり視野に入り、どのように“暮らす”のかを少しずつ実践していく段階に入っていきます。

 このタイミングでこんなことをおぼろげに考えるようになります。

どのように生きるのか。

どのように死ぬのか。

 まだ自分も40代なので、このステージにすら到達していませんが、自分の親や年配の顧客の方などと接していると、生と死を同時に見据えているような印象を受けます。

 ここでいう「どのように生きるのか」は、当然、“暮らし”方も入っていますが、それよりもむしろ、後悔しない人生とか、どのように終わりを迎えるのかといった、ゴールを見据えての生き様(よう)を意識した今後の歩みが価値観の中心になっていくような気がします。

 

 おそらくライフプラン(人生設計、生活設計)の本質的な目的は、この「どのように終わりを迎えるのか」という、“暮らし”方ではなく、“生き”方を自分自身に問うことだと思いますが、同時にこれが「終活」の目的にもなっているようです。

 冒頭に言及した「生きること」と「死ぬこと」が同じ意味に思えてしまったのは、きっとこういう理由からなのかもしれません。

 

 さて、ファイナンシャル・プラニングの観点から「終活」について少し考えていきたいと思います。

 終活とは、どのように終わりを迎えるのかということ。

 つまり、今から終わりに向かってどのように生き支度を整えていくのかということです。

自分の人生を振り返る。 

 自分がどう生きたのかを振り返ることは世代を問わずあることです。

 しかし、このステージに入ると、より深くそう思うようになるんだと思います。

 なぜなら、その後の人生をどのように生きるのか、そしてどのように残りの人生を終わらせるのかを考えるために必要になってくるからです。

 これを前提に「終わらせ方」、つまり「残りの人生に向けた歩み方」を考えることになりますが、これがいわゆる「終活」としての方法論です。

 ひょっとしたら日本人の価値観である「潔さ」が、終活における方法論として重要な要素になってくるのかもしれません。

 

 終活の方法論についてはひとことでまとめると、このように考えています。

終わりに向けて身支度を整えること。

 家族になるべく迷惑をかけない、飛ぶ鳥跡を濁さないといった考え方ですが、すべてにおいて早めに始末できることは始末しておくことが重要です。

身辺整理 

 別の言い方をすると「身辺整理」ということになるでしょうか。

 高齢者の顧客の方々と対面すると、身の回りの整理をするのが億劫になっていると言われます。

 重要な書類や契約関係、法律や行政にかかわる手続きなど、ごちゃごちゃとややこしい内容のものに目を配っていくのが面倒になっていくそうです。

 このようなことから、リタイアメント・ステージに入ったら、なるべく

シンプルな生活

が求められるようになります。

 ファイナンシャル・プラニングにおいては、次のような点に配慮していきます。

①財産目録の作成

 預貯金の金額や保険金、株式や投資信託などの有価証券の価格、土地・建物などの不動産評価額、車や書画・骨董品類の動産評価額などを合わせた「総資産額の整理」を適宜行っていきます。

 書類などがばらばらに存在して、ごちゃごちゃとわかりにくくなっている状態を解消するという意味もあります。

 これは、資産を持っている、持っていないにかかわらず、終わりに向けてお子さんや身内に財産を引き継がせるために必要な準備です。

 

②遺産分割の準備

 財産目録を作成した後は、遺族にどのように財産を分けていくのか、その分割計画をあらかじめ作成しておきます。

 遺言などで準備するのが一般的ですが、後の遺産分割協議書の作成にも影響してくることなので、身辺整理としては有効に機能します。

 普通、相続というと、相続税の納税義務が発生する資産家といったイメージですが、誰でもいつかは終わりを迎えます。

 つまり、死は誰にでも訪れるため、相続税がかかる、かからない、資産の多寡にかかわりなく、財産の移転が必ず生じることに備え「遺産分割の準備」が必要になってきます。

 

③介護状態になった場合の手当て

 人間、老化とともにどうしても体が不自由になっていきます。

 日本人の死因で最も多いのは老衰による死亡ですが、体が動かなくなった場合に備えて、介護の認定(要支援・要介護)を受ける、受けないにかかわらず、どのように家族で助け合っていくのか事前に考えておく必要があります。

 一般的には介護施設を選択するイメージかもしれませんが、超高齢化社会にともない、国はなるべく在宅介護がしやすいよう家族の生活に配慮した制度改正を進めているので、今後、この重要性は高まっていくと考えられます。

 

④住まいの整理

 これは、①財産目録の作成、②遺産分割の準備にもつながっていますが、今住んでいる自宅を終わりに向けてどのように処分していくのか、あらかじめ検討しておく必要があります。

 いわゆる「終の棲家対策」です。

 売却、賃貸、相続、取り壊しなど、方法によって不動産に関する税の取扱いが異なってくるので、この煩わしさを考えると、お子さんや身内に対応を繰り延べるのではなく、早めに対策を考えていくと安心です。

 

⑤お墓の準備

 昔は、マイホームを買うときについでにお墓も立てておくというのが一般的だったそうです。

 お寺に立てるのか、霊園にするのか、宗教・宗派によって墓石をどのようにするのか、建立にいくらぐらいかかるのかなど、お墓について知っておかなければならない知識は意外と多いです。

 また、遺された家族にとってはお墓参りというイベントは通年行事となるため、特に地方から都市部に来られた方の場合、どこにお墓を立てるのかも事前に話し合う必要があるでしょう。

 

⑥死亡後の対策

 実際に終わりを迎えた後は、「死亡届の提出」、「死亡保険金の受け取り」、「葬儀の準備」、「財産の移転(相続)」、「法事」といった諸々のイベントが発生します。

 これらのことを事前に確認し、お子さんや身内の方々にどのように伝えておくのか、わかりやすく内容や対応策をまとめたものを遺しておくと、事後の対応がスムーズにいきます。

 

 終活ではよく「エンディングノート」と呼ばれる自分史のようなものを作ろうと投げかけられますが、ある意味、これも有効かと思います。

 ただ、終活としての方法論としては、やはり

いかに身辺を整理していくのか。

=終わりに向け、家族に迷惑がかからないように、いかに身支度を整えていくのか。

が重要になってきます。

 

 このようなことから逆算すると、ひょっとしたら人生に重要なことはそれほど多くなく、潔い人生をいかに送ることができるのかを軸にライフプランを立てていくのが本当はいいのかもしれません。

 過剰に安心を求め、保険の営業マンの言うなりに保険に入ってしまう、最近流行りの不動産投資を勧められ、さらなる老後の安心を求める。

 最近、こういう傾向に少し違和感を覚えていますが、このようにエンディングから人生を逆算してみると、人生にとって何が大切なのか振り返られるような気がします。

 1970年以降まれの僕らにはまだ少し遠いお話です。

 ちょっとだけ念頭に入れながら、自分やご夫婦、家族に合ったライフプランを考えていくようにしてくださいね。

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