ドナルド・トランプ新大統領の経済政策の意味
アメリカの歴史って意外と面白い。
学生の頃、アメリカの小学生が使っている歴史の教科書を読んだことがありますが、ドナルド・トランプ新大統領後の世界経済がどうなるのかについて調べていたら、あの頃の感覚が蘇りました。
つまるところ、アメリカの政治は、いろんな国から移り住んできた、よその国の人々の「思想」の集合体と言えます。
一般的に共和党は「保守」、民主党は「リベラル」と位置づけられていますが、アメリカの場合の保守、リベラルってなんですかね。
それは、「自由」を軸にした考え方やスタンスの違いです。
保守もリベラルも共通するのは、「人間の持つ個としての自由」ですが、保守の場合、そのベクトルは生きるうえでの「活動」に向いています。
一方、リベラルの場合は、自由そのものに内包されている「精神性」に重きが置かれます。
日本では、保守的思想というと「日本古来の伝統的な考え方」、リベラル的思想は「弱者の保護・救済」のようなニュアンスで語られますが、アメリカの場合はキリスト教的思想がその根源にあります。
さて、世界経済を見る場合、「人々の思想・哲学の勢力図が“超”長期的にどのように移り行くのか」、ここが重要な鍵になります。
かなりマニアックですが、簡単に言うと、“アメリカ人ってこんな感じだから、結局、こうなるよね”という解を自分で導き出す過程が一番面白いのかもしれません。
ヨーロッパの人は?
日本の人は?
中国の人は?
つまり、世界経済を俯瞰するということは、人々の考えを垣間見ることに等しい。
これが、資産運用を長年行ってきた人間としてのひとつの答えです。
ドナルド・トランプ新大統領の経済政策もしかり、結局は、どのような思想にもとづいているのかをチェックしてみる、ここに尽きます。
次の記事は東洋経済のリンクですが、“ふ~ん”程度に読んでみると面白いかもしれません。
もうひとつ、ドナルド・トランプ氏の取り巻きについて書かれているのが次の記事です。
こちらも、“そうなのかもね”程度にひとつの情報として捉えておくと、ある程度の軸が見えてきます。
これらを踏まえ、ドナルド・トランプ新大統領就任後の経済政策を見ていくようにしましょう。
同じく東洋経済の記事ですが、「自由」についての捉え方がドナルド・トランプ氏の経済政策に現れています。
たとえば、減税。
所得税も、法人税も、減税することで、個人にとっては消費を、企業にとっては設備投資を促し、アメリカを再び強くしようとしています(make America geat again)。
これは、個人や企業の経済活動の自由を政府が制限してはいけないという意味ですね。
短期的には減税の効果が出てくるでしょうが、長期的には財政赤字が膨らんでしまうリスクがあります。
それと、1兆円にのぼる戦後最大のインフラ投資。
橋を作ったり、道路を作ったり、ダムを作ったり、公共事業を行うことで雇用を生み出す政策です。
これは、移民から働くという自由を奪われてしまったアメリカ国民に仕事を与えるという意味です。
同じく、NAFTA(北米自由貿易協定)の廃止やTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への不参加も、アメリカ人の働く(雇用)自由を海外から守るという意味があります。
これについては保護主義だと言われていますが、メキシコやカナダ、中国との貿易摩擦が懸念されています。
中国の為替操作についても痛烈に批判していますが、為替の取引は自然な経済活動(自由経済)のもと行われるべきだという考え方にもとづいています。
んじゃ、保護貿易はどうなの?と思ってしまいますが・・・。
また、金融規制改革法(ドッド・フランク法)の廃止も訴えていますが、資本取引は自由な市場に任せた方がいいという考え方ですね。
このように見ていくと、ある意味、本質を突いているようにも見えますが、逆に本当にこれでいいのかとも思えます。
アメリカ国内の景気を基準に考えると、株価の水準が歴史的な高値を更新し続けているので、決して悪いとは言えません。
むしろ、好景気と言っても過言ではありません。
ひとつ気になるのが、通貨の供給量を増やすことにどれだけの意味があるのかということです。
ここでいう通貨の供給量とは「減税」と「公共投資」ですが、通常、このような政策を打ち出すのは景気が悪いときです。
これに加えて、金融規制改革法(ドッド・フランク法)を廃止し、資本取引を活発化させようということなので、後々、ドル余りが懸念されます。
アメリカ・ファーストという言葉がメディアを通じて目立つようになりましたが、ドナルド・トランプ氏の経済政策は、単純に「アメリカだけが大事」、ここに尽きるような気がします。
就任してから4年後の2020年は大統領の1期目が終わる年です。
次の大統領選挙でアメリカ人はどのような答えを出すのでしょうか。
そして、日本は、今後、アメリカとどのように付き合っていくことになるのでしょうか。
アメリカよりも日本の方が長い歴史を経てきている分、思想・哲学がしっかりしていると思いますが、戦後レジームからの脱却を実現するうえで、本当は絶好の機会が訪れているのかもしれませんね。