70歳からを老後にしないために知っておきたい3つのこと:②公的年金だけでは老後の生活を満たせない!足りない部分をどう貯める?
以前からあるこの国の年金問題。
年金について何か問題があると、年金が減るとか、もらえないとか、いつも話の中心はここに向かっていきます。
でも、なにか違和感を覚えます。
本当に年金が問題なのかって。
だって、年金が減っても暮らしていける人はいるし、そういう人は年金問題についてどこ吹く風だったりするし・・・。
結局、老後も暮らしていけるだけの十分なお金があるのかどうか、これについて不安に思っている人が昔に比べてすごく多くなっているってことが問題なんですよね。
「老後の収入の基盤になる年金」はもちろん、前回の「70歳からを老後にしないために知っておきたい3つのこと:①賃金カーブが鈍化しても老後のお金が貯まる仕組みを作る」で取り上げた「生涯賃金」や「退職金」、「貯蓄」、「働き方の変化」、「福利厚生」などなど、これまで会社員が受け取っていた社会システムが様変わりしてしまった結果が、年金問題の本質なんだと思います。
今回は、社会システムの変化についてではなく、今ある枠組みをまずしっかりと知り、どのように老後の生活資金を準備していけばいいのかを一緒に考えていければと思います。
まずは、この国の年金制度から。
自分がどの年金に加入しているのか、確認してみてください。
日本の年金制度は、よく3階建てと言われます。
1階部分は「国民年金」です。
これは20歳以上の人が入る基礎的な年金制度です。
自営業やフリーランスなどは「第1号被保険者」、会社員や公務員などは「第2号被保険者」、会社員・公務員の奥さん、たとえば専業主婦ですが、この人たちは「第3号被保険者」と、同じ国民年金でも区分けされています。
2階部分は、第1号・第2号・第3号の区分ごとに、それぞれの年金制度が用意されています。
第1号には「国民年金基金」と「確定拠出年金(個人型)」、第2号には「厚生年金」、第3号には、平成29年1月からですが「確定拠出年金(個人型)」というものが始まります。
会社員の場合は、1階部分の国民年金(第2号被保険者)と2階部分の厚生年金ですよね。
ちなみに、会社員の方で自分の入っている年金は厚生年金だけと思っている方がいますが、国民年金にも入っているのでご安心ください。
3階部分ですが、これがあるのは会社員や公務員(国民年金の第2号被保険者)だけです。
会社員の場合、今、主流になっているのは「確定給付年金」と「確定拠出年金(企業・個人型)」ですが、一部「適格退職年金」が残っていたり、「厚生年金基金」が続いているところもあります。
※適格退職年金は原則廃止、厚生年金基金は解散の方向。
公務員の場合は、厚生年金との年金一元化により、それまで3階部分にあった職域年金が廃止され、「年金払い退職給付」に移行しています。
また、平成29年1月から「確定拠出年金(個人型)」へ加入することができるようになります。
会社員の方は、次のように認識しておきましょう。
(会社員の年金)
1階部分:国民年金
2階部分:厚生年金
(会社員の奥さん)
1階部分:国民年金
2階部分:確定拠出年金(個人型)※平成29年1月から
なんだ、ちゃんと入れてるから大丈夫そうじゃん。
国民年金・厚生年金の保険料をちゃんと払って、3階部分の確定給付年金や確定拠出年金(企業・個人型)も上乗せで加入している人は、本当はそんなに心配する必要はないんですよね。
1階、2階、そして3階部分までの年金制度を利用していると安心度が高い
ただ、年金財政のひっ迫から、入ってくるお金(保険料)と出ていくお金(年金支給額)の調整が今後も図られていくので、これについては注意しておくようにしましょう。
さて、もう少し現状認識をしていきましょう。
老後の生活費と公的年金の関係です。
生命保険文化センター「生活保障に関する調査(平成22年)」によると、老後に必要な最低限の日常生活費は、約22.3万円となっています。
一方、同調査によると、ゆとりのある老後の生活費は、約36.6万円です。
これらのデータは、鵜呑みにしないでくださいね。
ライフスタイルや地域差もあるので、あくまでもアンケート調査にもとづく平均値です。
出ていくお金、つまり、老後の生活費の目安はわかりました。
では、実際、公的年金(国民年金と厚生年金)が今、どれぐらい支給されているのでしょうか。
平成27年度の厚労省年金局の資料によると、国民年金と厚生年金の平均受給額(月)は、ここ数年、このように推移しています。
国民年金も、厚生年金も、毎年、支給額が減っていますが、直近の平成26年度の平均支給額(月)を見ると、
国民年金:5万4,497円(月)※年間65万3,964円
厚生年金:14万7,513円(月)※年間177万156円
合計:20万2,010円(月)※年間242万4,120円
となっています。
自分の年金受給額については「ねんきんネット(日本年金機構)」で試算してみましょう。
さぁ、この合計、月々20万2,010円、老後の生活に足りますか?、それとも足りませんか?
単純に、先ほどの生命保険文化センターの「老後の最低日常生活費」と「ゆとりある老後生活費」をもとに月々の金額を計算すると、
①最低限の生活:(公的年金)20万2,010円-(生活費)約22.3万円
=▲2万990円(月)
②ゆとりある生活:(公的年金)20万2,010円-(生活費)約36.6万円
=▲16万3,990円(月)
となります。
いずれにせよ、
収入が公的年金だけだと、老後の家計は赤字になる
ことがわかりました。
あくまでも、ライフスタイルや地域差があるので、統計上はそうなるということです。
最低限の生活がしたいなら約2万円足りない。
ゆとりある老後を送りたいなら約16万円足りない。
と仮定します。
それでは今度は、この足りない金額をどのように満たしていけばいいのかについて考えていきましょう。
日本の年金制度に戻ります。
会社員の場合、公的年金は、1階部分が国民年金、2階部分が厚生年金でした。
それでは、3階部分は?
お勤めの企業によって異なりますが、3階部分の年金は、一般的に企業や組合などが準備する「私的な年金」と位置づけられます。
会社員の場合、これからの主流は「確定給付年金」と「確定拠出年金」です。
まず、これについて、自分が加入しているのかどうかを確認してみましょう。
大企業では、両方準備されているケースがあります。
確定“給付”年金は、将来もらえる年金が“確定”=始めから決まっています。
確定“拠出”年金は、将来もらえる年金は不確定ですが、掛金(保険料)を始めから決めることができます(=“確定”)。
老後、最低限の生活を送る場合、これら3階部分の私的年金でコトは足りそうです。
でも、ゆとりある老後を送りたいならば、足りていない約16万円(月)※年間約192万円を満たすのは難しいでしょう。
あとは、自助努力で準備していく必要があります。
方法は、次の5つが一般的です。
①家計の工夫・見直しをする
②退職金や預貯金を生活費に充てる
③個人年金保険やその他貯蓄性のある保険で積み立てる
④資産運用を行う
⑤財形年金貯蓄を活用する
基本的には今から始める。
これが最善の策ですが、1970年以降生まれの私たちにとっては、子育ての最中の方も多くいらっしゃるかと思います。
子育てしながら老後のお金も貯めるのは、今のご時世、結構難しいですよね。
ご家庭によって考え方はまちまちだと思いますが、子育てがある程度落ち着いたら、奥さまは130万円の壁を気にせず、社会保険料を納めてでも働くようにすると、世帯収入が増え、かつ、公的年金の受給額も増えるので、老後はゆとりある生活を比較的送りやすくなるでしょう。
ちなみに、年収130万円から年収150万円の間は、社会保険料が発生するため手取り収入が逆に減ってしまいます。
※参照)
fp-office-kaientai.hatenablog.com
働く場合は、配偶者控除の年収要件が150万円以下に改正されますので、年収150万円を目安に働くことができるよう工夫してみましょう。
配偶者は「年収150万円の壁」まで働く。
(まとめ)
合計すると、月々の平均受給額は「20万2,010円」。
老後の最低日常生活費は、平均22.3万円(月)。
ゆとりある老後の生活費は、平均36.6万円(月)。
公的年金だけでは、最低限必要な生活費には、月々約2万円足りない。
公的年金だけでは、ゆとりある老後の生活費には、月々約16万円足りない。
確定給付年金や確定拠出年金を活用すると、もう少し余裕が出る。
それでもゆとりある老後の生活費としては足りないため、足りない部分は自助努力で準備していく。
子育てが落ち着いたら、奥さまも年収150万円まで働くようにする。
次回は、「70歳からを老後にしないために知っておきたい3つのこと:③1億総“確定拠出年金“時代? 確定拠出年金制度を知って、ゆとりある老後のための準備を始めよう!」です。
シリーズ最終回ですが、最後までお付き合いいただければ光栄です。